■
ヴェールを被る婦人の肖像(ラ・ヴェラータ)
1516年頃
Ritratto di donna (La Velata)
85×64cm | 油彩・板 | ピッティ美術館(フィレンツェ)
ラファエロが手がけた数多くの肖像画の中にあって、別格の存在感と想いの秘められた作品『ヴェールを被る婦人の肖像』。通称ラ・ヴェラータ。モデルはパン屋の娘でフォルナリーナ(パン屋の娘の意)と呼ばれる。ラファエロはこの女性と密かな恋愛関係にあったが、ラファエロを支持していた人々の中で最も権威のある人物のひとりビビエーナ枢機卿から姪のマリアとの結婚話を持ちかけられ、野心を持っていたラファエロは、それに従うべくフォルナリーナとの恋愛関係に終止符を打つが、フォルナリーナへの想いを断ち切ることができず、婚礼の衣装を纏った婦人の肖像画として、自己の想いを表現した作品だと云われている。ヴェールを被るフォルナリーナの表情は、自分たちが結ばれないことへの悲しみを表しているとされているが、ヴェールの下に見える髪飾りは人妻を意味し、ラファエロは実現しなかったフォルナリーナの婚姻を本作で表現した。また描かれた当初は婚姻の証である指輪がフォルナリーナの指に描かれていたが、本作が一般に公開されることになったことから、画家自身がそれを隠す為、後から絵具を上塗りしたとされている。
関連:
『若い婦人の肖像(ラ・フォルナリーナ)』