2008/12/04掲載
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野兎、獲物袋、火薬入れ(死んだ野兎と狩猟用引き具)(Wild Rabbit with Game Bag and Powder Flask) 1729年頃 81×65cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) 関連:1724-28年頃制作 『二匹の野兎、獲物袋、火薬入れ』 関連:1727-28年頃制作 『野兎、獲物袋、火薬入れ、鷓鴣』 関連:1730年頃制作 『野兎、獲物袋、火薬入れ、鶫と雲雀』
仕留められた野兎。おそらくはシャルダンが王立絵画・彫刻アカデミーの正式な会員となって間もない頃(1729年頃)に制作されたと推測されている本作は、狩猟での獲物となる野兎と、狩猟の際に使用した獲物袋(獲物入れ)、鉄砲へ用いる火薬入れを描いた静物画である。
【仕留められた野兎】
力無く吊るされる野兎の脚。17世紀オランダ絵画の風俗的影響も指摘されている本作の画面のほぼ中央へ配される狩猟によって仕留められた野兎は石壁へ脚先から吊るされているが、その姿態や筋肉は弛緩し生の躍動を感じることができない。
【力無く吊るされる野兎の脚】
使用感漂う獲物袋と火薬入れ。シャルダンは本作の制作において、あたかも道具置き場に獲った獲物を無造作に吊るしたかの如く配置しており、その飾らない実直な対象表現・描写であるからこそ、今も我々観る者の心を捉え続けるのである。
【使用感漂う獲物袋と火薬入れ】 |