Description of a work (作品の解説)
2008/11/18掲載
Work figure (作品図)
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食事の支度(貧しい家庭)


(Apprêts du repas, ou Pauvre famille) 1761-65年頃
47×61cm | 油彩・画布 | プーシキン美術館(モスクワ)

18世紀ロココ様式最後の大巨匠ジャン・オノレ・フラゴナールの代表的な風俗画作品のひとつ『親の居ぬ間に(農婦の子供たち)』。寸法や構図、描かれる人物の類似性からニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵される有名な『負けた罰に(盗まれた接吻)』と対画関係にあると考えられている本作は、炉の前で食事の支度をおこなう貧しい一家の母親とそれを手伝う子供たちの情景を描いた典型的な風俗画作品である。画面中央やや右側に配される腕まくりをした母親は片腕で赤ん坊を抱きかかえながら、赤々とした炉の炎によって熱せられた鍋の蓋を取り子供たちへ指示を出すような表情を浮かべている。画面左側に配される三人の子供たちは母親の指示に従うかのように鍋の中へ具材を投入しているが、その姿は多少、炎に怯えているようにも見える。暗い部屋の中を楕円形の光源が母親を中心に照らし出しており、本作の家庭的な温もりを感じさせる喧騒性を効果的に浮かび上がらせている。またこの家族の背後には大きなカーテンが掛けられており、その奥(母親の背後)からはひとりの子供が顔を覗かせている。画面下部には料理の材料に用いたのであろうひと束の野菜が無造作に置かれており、この情景が貴族階級を姿を描いたものではなく、庶民階級の姿を描いたことを暗示している。画家が30歳前後に描かれたと推測される本作の登場人物の個性と性格性豊かな風俗的表現は若きフラゴナールの類稀な画才を見事に示しており、そこからは後の巨匠の片鱗さえ感じることができる。また色彩描写においても母親の身に着ける衣服に用いられた赤色と野菜の青々とした緑色の見事な対比や、大きな明暗差による大胆な黄色を主色とした光の表現には目を見張るものがある。

関連:メトロポリタン美術館所蔵 『負けた罰に(盗まれた接吻)』


【全体図】
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子供たちに指示をする母親の姿。有名な『負けた罰に(盗まれた接吻)』と対画関係にあると考えられている本作は、炉の前で食事の支度をおこなう貧しい一家の母親とそれを手伝う子供たちの情景を描いた典型的な風俗画作品である。



【子供たちに指示をする母親の姿】
赤々とした炉の炎によって熱せられた鍋。画家が30歳前後に描かれたと推測される本作の登場人物の個性と性格性豊かな風俗的表現は若きフラゴナールの類稀な画才を見事に示しており、そこからは後の巨匠の片鱗さえ感じることができる。



【炉の炎によって熱せられた鍋】
食事の支度を手伝う子供たち。画面左側に配される三人の子供たちは母親の指示に従うかのように赤々とした炉の炎によって熱せられた鍋の中へ具材を投入しているが、その姿は多少、炎に怯えているようにも見える。



【食事の支度を手伝う子供たち】

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