Description of a work (作品の解説)
2009/06/14掲載
Work figure (作品図)
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歯医者

 (Dentista) 1746年頃
50×62cm | 油彩・画布 | ブレラ美術館(ミラノ)

18世紀イタリアを代表するヴェネツィアの風俗画家ピエトロ・ロンギの傑作『歯医者』。本作はパラッツォ・ドゥカーレの玄関前でおこなわれる歯の治療を題材にピエトロ・ロンギが1746年頃に制作した風俗画作品のひとつである。画面上部中央へは、つい今し方抜歯したのであろう歯医者が歯を右手指先で抓み、集まる者へと誇示するように掲げている姿が配され、その直下では患者である少年が抜歯したばかりの口を手拭(ハンカチ)で押さえており、その痛々しそうな姿は観る者へもよく伝わってくる。画面右側には患者の少年を心配そうに見つめる2人の婦人や、通行人であろうヴェネツィアの仮面舞踏会の伝統的な衣服を身に着けた人々が描き込まれている。反対側の画面左側へは猿へ餌(パン)を与える無邪気な子供たちのほか、朱儒(小人、背丈が低い者)が凶を避けるために、人差し指と小指を立てて「悪魔の凶眼(悪魔祓いを意味する)」のサインを右手で形作っている姿などが配されている。本作で最も注目すべき点は、画家の主要な画題のひとつであった≪同時代の職業≫を取り上げ、ヴェネツィアの日常を描写したその姿勢にある。明瞭な光彩や主題の扱いについてはアントワーヌ・ヴァトージャン・シメオン・シャルダンなどフランスの画家の影響が色濃く反映されているものの、ピエトロ・ロンギはそこへヴェネツィアの伝統を感じさせる豊潤な色彩表現や調和性を融合させ独自的な風俗画へと昇華させており、観る者の目を奪うばかりである。


【全体図】
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抜いた歯を誇らしげに掲げる歯医者。本作はパラッツォ・ドゥカーレの玄関前でおこなわれる歯の治療を題材に画家が1746年頃に制作した風俗画作品のひとつで、画面上部中央へは、つい今し方抜歯したのであろう歯医者が歯を右手指先で抓み、集まる者へと誇示するように掲げている姿が配されている。



【抜いた歯を誇らしげに掲げる歯医者】
手拭で口を押さえる患者の少年と仮面を着けた人々。画面中央から右側へは痛々しそうな姿が観る者へもよく伝わってくる患者の少年と、それを心配そうに見つめる2人の婦人や、通行人であろうヴェネツィアの仮面舞踏会の伝統的な衣服を身に着けた人々が描き込まれている。



【手拭で口を押さえる患者の少年】
小猿へ餌(パン)を与える無邪気な少年たち。本作の明瞭な光彩や主題の扱いについてはヴァトーシャルダンなどフランスの画家の影響が色濃く反映されているものの、ピエトロ・ロンギはそこへヴェネツィアの伝統を感じさせる豊潤な色彩表現や調和性を融合させ独自的な風俗画へと昇華させている。



【猿へ餌(パン)を与える無邪気な少年】
「悪魔の凶眼(悪魔祓いを意味する)」のサインを右手で形作る朱儒(小人、背丈が低い者)。この人差し指と小指を立てる「悪魔の凶眼」は凶を避けるためのポーズであり、当時のヴェネツィアでは土壌信仰的にしばしば用いられていたと考えられている。



【悪魔の凶眼のサインを作る朱儒】

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