Description of a work (作品の解説)
2009/06/28掲載
Work figure (作品図)
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新世界(覗きからくり)

 (Mondo novo) 1756年頃
62×50.5cm | 油彩・画布 | クエリーニ・スタンパリア美術館

18世紀ヴェネツィアの風俗画家ピエトロ・ロンギの典型的な作例のひとつ『新世界(覗きからくり)』。ヴェネツィアのクエリーニ・スタンパリア美術館に所蔵される本作は、当時のヴェネツィアにおける謝肉祭(カルネヴァーレ)の一場面で、パラッツォ・ドゥカーレの回廊でおこなわれた見世物のひとつである≪覗きからくり(庶民は「新世界」と呼んでいた)≫の情景を描いた作品である。画面左側上部(画面奥左側)へ本作の名称ともなった覗きからくりと、それをアピールする主人が配されているが、そこに注目している者は本作中に誰一人として描かれていない。それは本作を閲覧する者やピエトロ・ロンギ自身も同様であり、(我々を含む)視線は、否が応にも画面中央でおこなわれる男女の駆け引きに向けられる。前景では画面中央よりやや右側に配されるヴェネツィア独特の礼服(ヴェラーダ)を着た優男が、白く上品な肩かけを身に着けた若い娘を誘う姿が描き込まれている。若い娘は男の誘いに興味を示す態度は見せていないものの、最低限の礼は尽くしているようである。その隣にはおそらくは友人であろう豪華な金色の肩かけと水色の衣服が特徴的な娘が配されているが、この娘は2人の動向を注意深く観察するかのように視線を両者へと向けている。そして画面最前景となる画面左下に配されるひとりの人物が、それらを傍観的に眺めている。さらにその奥では黒仮面(モレッタ)と黒外套(バウッタ)を着た2名の人物がなにやら怪しげな会話に明け暮れている様子が描かれているほか、画面右奥には娘が誰かと話しこんでいる姿が配されている。ロンギ自身も出向いていたであろう、この謝肉祭における市民たちの人間的な様子や動向を、優雅かつ穏やかに表現しながら、その内面に潜む世俗性をも描き出した画家の鋭い観察眼は、本作でも特に注目すべき点である。


【全体図】
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娘を誘う男と興味を示さない若い娘。前景では画面中央よりやや右側に配されるヴェネツィア独特の礼服(ヴェラーダ)を着た優男が、白く上品な肩かけを身に着けた若い娘を誘う姿が描き込まれている。若い娘は男の誘いに興味を示す態度は見せていないものの、最低限の礼は尽くしているようである。



【娘を誘う男と興味を示さない若い娘】
必死に覗きからくりをアピールする主人。本作は当時のヴェネツィアにおける謝肉祭(カルネヴァーレ)の一場面で、パラッツォ・ドゥカーレの回廊でおこなわれた見世物のひとつである≪覗きからくり≫の情景を描いた作品である。



【覗きからくりをアピールする主人】
黒仮面(モレッタ)と黒外套(バウッタ)を身に着ける者たち。ロンギ自身も出向いていたであろう、この謝肉祭における市民たちの人間的な様子や動向を、優雅かつ穏やかに表現しながら、その内面に潜む世俗性をも描き出した画家の鋭い観察眼は、本作でも特に注目すべき点である。



【黒仮面と黒外套を身に着ける者】

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