Description of a work (作品の解説)
2009/05/25掲載
Work figure (作品図)
■ 

 (Rinoceronte) 1751年
62×50cm | 油彩・画布 | 18世紀ヴェネツィア美術館

18世紀ヴェネツィアで活躍した風俗画家ピエトロ・ロンギの代表作『犀』。本作は同時代の見世物など特に注目された時事を、画家が実際にその場へ足を運び写生した風俗画の最初の作品で、当時、欧州中で珍重された異国の動物≪犀≫がヴェネツィアで見世物として展示された時の様子が克明に描き出されている。画面中央から下部には欧州には生息していない、象に次いで大きな陸生の草食哺乳類動物である犀(サイ)が悠々と、そして憮然にも感じられる様子で干し草を食べる姿や垂れ流された糞が配され、画面上部にはそれを珍しそうに見物する貴族たちや鞭を振りかざす見世物小屋の者が描き込まれている。見物人よりはるかに大きく、硬く黒々とした皮膚や獣としての特異な姿には(おそらく)当時、初見であろうヴェネツィアの人々に対して威圧的に映ったであろうことは容易に想像でき、本作に描かれる犀はそのような動物的特徴を見事に捉えている。さらにピエトロ・ロンギが見世物そのものの熱気も本作へ描き出している点に特筆すべき点は多い。画面右端へ描かれる赤い外套を身に着けた男は長パイプを咥えながらまじまじと犀を眺めており、画面上部の一段高い観覧席に配される三名の女性らの中央の女性は覗き込むような視線を犀へ向けている。さらに思うような行動をおこさない犀に対してやや苛立ちを見せる見世物小屋の者(鞭を振りかざす者)など、現在、我々が当時の様子を知るのに十分な情報をロンギは本作の中へ描き込んでいる。


【全体図】
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干し草を食べる犀の憮然とした姿。本作は同時代の見世物など特に注目された時事を、画家が実際にその場へ足を運び写生した風俗画の最初の作品で、当時、欧州中で珍重された異国の動物≪犀≫がヴェネツィアで見世物として展示された時の様子が克明に描き出されている。



【干し草を食べる犀の憮然とした姿】
鞭を振りかざす見世物小屋の者。見物人よりはるかに大きく、硬く黒々とした皮膚や獣としての特異な姿には(おそらく)当時、初見であろうヴェネツィアの人々に対して威圧的に映ったであろうことは容易に想像でき、本作に描かれる犀はそのような動物的特徴を見事に捉えている。



【鞭を振りかざす見世物小屋の者】
物珍しそうに犀を眺める見物人たち。画面右端へ描かれる赤い外套を身に着けた男は長パイプを咥えながらまじまじと犀を眺めている姿など、現在、我々が当時の様子を知るのに十分な情報をロンギは本作の中へ描き込んでいる。



【物珍しそうに犀を眺める見物人】

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