Description of a work (作品の解説)
2008/03/02掲載
Work figure (作品図)
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無原罪の御宿り

 (Immaculate conception) 1767-1769年頃
279×152cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

18世紀イタリア絵画最大の巨匠であるジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ晩年を代表する宗教画作品のひとつ『無原罪の御宿り』。1762年、当時のスペイン王カルロス3世から王宮の装飾画制作のためにマドリッドに招かれた際、同王から重ねてアランフェスのフランシスコ会サン・パスクアル聖堂の祭壇画の依頼を受け画家が制作した本作に描かれるのは、カトリック信仰(そして聖母マリア信仰)の厚かった当時のスペインで最も人気の高い宗教的主題のひとつ≪無原罪の御宿り≫である。ティエポロはその生涯の中で本主題を数多く手がけているものの、本作は画家の晩年期における独特の様式的特徴が良く表れている作品として特に名高い。例えば30年程前にティエポロによって手がけられた同主題の代表的な作品のひとつ『無原罪の御宿り(ヴィチェンツァ市立美術館所蔵)』と比較してみてもそれは顕著であり、ヴィチェンツァ市立美術館が所蔵する『無原罪の御宿り』は、軽やかな筆触によって、聖母マリアの神聖的純潔性が強調されるかのように表現されているものの、本作では純潔性を表現しながらも、より壮麗で重厚な宗教的威厳と美しさに溢れている。この一連の祭壇画が制作された当時は、新古典主義が勢力を強めており、本作が祭壇に飾られた数年後、(新古典主義の熱狂的な信望者であった同会修道士によって)バイェウなど他の画家が手がけた作品に置き換えられてしまい、長く保管状態が続いた為に劣化が著しいのであるが、それでも本作の濃密で威風堂々とした色彩描写や、複雑に変化を見せながらも上方へと昇華してゆくかのような計算された構図展開などは、画家の(画業によって築き上げた)独自の様式美の集大成を感じさせる。

関連:ヴィチェンツァ市立美術館所蔵 『無原罪の御宿り』


【全体図】
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堂々とした聖母マリアの姿。当時のスペイン王カルロス3世からアランフェスのフランシスコ会サン・パスクアル聖堂の祭壇画の依頼を受け画家が制作した本作に描かれるのは、カトリック信仰(そして聖母マリア信仰)の厚かった当時のスペインで最も人気の高い宗教的主題のひとつ≪無原罪の御宿り≫である。



【堂々とした聖母マリアの姿】
写実的でありながら様式的美しさに溢れる表現。ティエポロはその生涯の中で本主題を数多く手がけているものの、本作は画家の晩年期における独特の様式的特徴が良く表れている作品として特に名高い。



【様式的美しさに溢れる表現】
上弦の月に乗る聖母マリアの御足。本作では聖母マリアの純潔性を表現しながらも、より壮麗で重厚な宗教的威厳と美しさに溢れており、濃密で威風堂々とした色彩描写や、複雑に変化を見せながらも上方へと昇華してゆくかのような計算された構図展開などは特筆に値する出来栄えである。



【上弦の月に乗る聖母マリアの御足】
聖母マリアの頭上に現れた聖霊の姿。本作が制作された当時は新古典主義が勢力を強めており、本作が祭壇に飾られた数年後、バイェウなど他の画家が手がけた作品に置き換えられてしまい長く保管状態が続いた為に、劣化が著しい。



【聖母マリアの頭上に現れた聖霊の姿】

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