Description of a work (作品の解説)
2008/08/12掲載
Work figure (作品図)
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フランスの喜劇役者たち


(Comédiens Français) 1718-1720年頃
57.2×73cm | 油彩・板 | メトロポリタン美術館

初期ロココ美術随一の画家アントワーヌ・ヴァトー晩年を代表する芝居画作品のひとつ『フランスの喜劇役者たち』。ヴァトー晩年期に手がけられた作品の中でも最もよく知られる作品のひとつである本作は、フランスの喜劇役者たちを描いた典型的な芝居画作品である。本作に描かれる芝居の内容についてはラシーヌの脚本による捕囚人アンドロマケーがピュロス王に嘆願する場面を描いたとする説を始め、諸説唱えられているものの、何れの説も確証を得るには至っておらず、現在も白熱した議論が続けられている。本作で最も注目すべき点は芝居画に対するヴァトーの取り組みの態度の変化にある。画家は『フランス喜劇の恋(フランス一座の恋)』や『ヴェネツィアの祝宴』など本作以前にも芝居画を複数枚手がけているが、本作においては芝居そのものの様子や展開の描写よりも、人物に対する興味や真実性がより明確に示されている。例えば画面中央やや左側に描かれる主役の豪華な衣服に身を包んだ女と男の表現は、それまでの作品と比較し、(やや芝居がかってはいるものの)明らかに迫真性が増しており、さも現実的な真実味を感じることができる。このように現実感を漂わせる登場人物に対する取り組みは晩年頃に制作された他の作品にも共通するものであるが、芝居画である本作でそれをおこなうヴァトーの意図や目的を推察することは、晩年の画家の表現様式や思想的変化を研究する上でも特に重要な点であり、今後の更なる展開が期待される。なお同時期にほぼ同寸法で、本作と同じく芝居を画題としたもうひとつの著名な作品『イタリアの喜劇役者たち』を画家は手がけているが対の作品としては否定されている。

関連:1719-20年頃制作 『イタリアの喜劇役者たち』


【全体図】
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やや芝居がかった女の仕草。本作に描かれる芝居の内容についてはラシーヌの脚本による捕囚人アンドロマケーがピュロス王に嘆願する場面を描いたとする説を始め、諸説唱えられているものの、何れの説も確証を得るには至っておらず、現在も白熱した議論が続けられている。



【やや芝居がかった女の仕草】
女の話に耳を傾ける身なりの良い男。画家は『フランス喜劇の恋(フランス一座の恋)』や『ヴェネツィアの祝宴』など本作以前にも芝居画を複数枚手がけているが、本作においては芝居そのものの様子や展開の描写よりも、人物に対する興味や真実性がより明確に示されている。



【女の話に耳を傾ける身なりの良い男】
階段から上がってくる小太りの男。現実感を漂わせる登場人物に対する取り組みは晩年頃に制作された他の作品にも共通するものであるが、芝居画である本作でそれをおこなうヴァトーの意図や目的を推察することは、晩年の画家の表現様式や思想的変化を研究する上でも特に重要な点であり、今後の更なる展開が期待される。



【階段から上がってくる小太りの男】

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