Description of a work (作品の解説)
2007/11/19掲載
Work figure (作品図)
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シテール島への船出


(Embarquement pour Cythere) 1718-1719年頃
129×194cm | 油彩・画布 | シャルロッテンブルク城

ロココ美術の画家アントワーヌ・ヴァトーの代表作『シテール島への船出』。作品の制作経緯に関しては諸説唱えられているものの本作は、前年(1717年)に制作された画家畢生の名画『シテール島への巡礼≪雅やかな宴≫』が成功を収め、そののレプリカとしておそらくは、画家の最初の伝記作家として知られるジュリエンヌの依頼によって制作された作品であると考えられている。しかし本作は単なるレプリカとは考えられないほど、表現的特長や構成要素の顕著な違いが認められる。シテール島への巡礼≪雅やかな宴≫と比較すると、明らかに複雑化した巡礼に訪れた男女、愛を象徴する女神ヴィーナスの像やキューピッドたちなど人物やアトリビュートの配置、より優雅で気品漂う場面描写、軽やかで多色的な色彩など、まさに雅宴画(フェート・ギャラント)の名に相応しい若さと愛の宴に満ちた表現へと変化している。本作には生涯病身であったヴァトー独特のメランコリックな雰囲気や物悲しげな情緒は殆ど感じられない。ここに表現されるのは巡礼を終えた若い複数の男女たちの愛に溢れた(又はそれを強調した)夢の世界なのである。この画家の表現様式的は変化の意図は不明であるも、シテール島への巡礼≪雅やかな宴≫同様、本作はヴァトーを代表する作品として今日でも親しまれ続けている。なお本作は1756年にジュリエンヌからプロイセンのフリードリヒ二世に売却され、現在はベルリンのシャルロッテンブルク城に所蔵されている。

関連:ルーヴル美術館所蔵 『シテール島への巡礼』


【全体図】
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巡礼を終え、帰路に着く若い男女たち。本作はシテール島への巡礼のレプリカとして、おそらくジュリエンヌの依頼によって制作された作品であると考えられている。



【巡礼を終え、帰路に着く若い男女たち】
より軽やかになる色彩描写。本作は単なるレプリカとは考えられないほど、表現的特長や構成要素の顕著な違いが認められる。



【より軽やかになる色彩描写】
大幅に増やされたキューピッド。本作はまさに雅宴画(フェート・ギャラント)の名に相応しい若さと愛の宴に満ちた表現へと変化している。



【大幅に増やされたキューピッド】
愛の女神ヴィーナスとキューピッドの像。本作は1756年にジュリエンヌからプロイセンのフリードリヒ二世に売却され、現在はベルリンのシャルロッテンブルク城に所蔵されている。



【愛の女神ヴィーナスとキューピッドの像】

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