Description of a work (作品の解説)
2010/12/02掲載
Work figure (作品図)
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キリストの磔刑

 (Christ sur la Croix) 1835年
182×135cm | 油彩・画布 | ヴァンヌ市立美術館

フランスロマン主義の大画家ウジェーヌ・ドラクロワを代表する歴史的主題作品のひとつ『キリストの磔刑』。ゴルゴタの丘、二人の盗賊の間のキリストとも呼称される本作は、自らユダヤの王を名乗り民を惑わせたとしてユダヤの大司祭カイアファやユダヤの民衆らがイエスを告発し、罪を裁く権限を持つ総督ピラトが手を洗い(ピラト)自身に関わりが無いことを示した為、受難者として司祭や民衆の望むゴルゴタの丘での磔刑に処されたという、教義上最も重要な主題のひとつ≪キリストの磔刑≫を主題に制作された作品で、完成後、政府の買い上げとなりヴァンヌ市のサン・パトラン聖堂へと納められている。画面中央上部に配される受難者イエスはやや斜めの視点から十字架上へ架けられた姿で絵が勝てれおり、その背後にはイコノグラフ(図像学)にも忠実な不吉な暗雲と雷光が表現されている。また受難者イエスの左右には同時に磔刑に処されたとされる盗人2名が描かれている(※左側の盗人はこれから十字架へ掲げられようとしている)。そして受難者イエスの十字架の元ではマグダラのマリアが涙を流し祈りの仕草を見せながら主の姿を仰ぎ、前景では聖母マリアと聖ヨセフが悲痛な表情を浮かべながら抱擁し合っている。バロック期における最大の画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1620年に手がけた同主題の作品に明確な影響を受けている痕跡が示される本作は、構成的には過去の偉大なる巨匠らに準じる古典性を見出すことができるものの、磔刑場に集まるユダヤの民衆や司祭、ロンギヌスなどのローマ兵、そして信者らの虚無的な無力感や斜めの視点で描く空間構成による劇的効果、さらに色彩によって強弱が強められる前景と後景の明暗対比などドラクロワ独自の絵画的昇華性には特に注目すべきである。なお画面最前景(画面最下部)に描き込まれる髑髏と蛇は旧約聖書に記されるアダムとエヴァによる原罪(※エヴァは蛇に唆され、父なる神に口にすることを禁じられていた≪善悪の知識の実≫を食した)を償う者としてのイエスを暗示している。


【全体図】
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磔刑に処される受難者イエスの姿。本作はキリスト教の教義上最も重要な主題のひとつ≪キリストの磔刑≫を主題に制作された作品で、完成後、政府の買い上げとなりヴァンヌ市のサン・パトラン聖堂へと納められている。



【磔刑に処される受難者イエス】
悲しみの表情を浮かべる聖母マリアと聖ヨセフ。受難者イエスの十字架の元ではマグダラのマリアが涙を流し祈りの仕草を見せながら主の姿を仰ぎ、前景では聖母マリアと聖ヨセフが悲痛な表情を浮かべながら抱擁し合っている。



【聖母マリアと聖ヨセフの姿】
涙を浮かべ主を仰ぐマグダラのマリア。イコノグラフ(図像学)にも忠実な本作にはバロック期における最大の画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1620年に手がけた同主題の作品に明確な影響を受けている痕跡が示されている。



【涙を浮かべ主を仰ぐマグダラのマリア】
最前景に配された髑髏と蛇。画面最前景(画面最下部)に描き込まれる髑髏と蛇は旧約聖書に記されるアダムとエヴァによる原罪(※エヴァは蛇に唆され、父なる神に口にすることを禁じられていた≪善悪の知識の実≫を食した)を償う者としてのイエスを暗示している。



【最前景に配された髑髏と蛇】

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