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ダンテの小船
(地獄の町を囲む湖を横切るダンテとウェルギリウス)
(La barque de Dante (Dante et Virgile aux enfers))
1822年 | 189×264cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館
ロマン主義の巨匠ウジェーヌ・ドラクロワ最初期の傑作『ダンテの小船(地獄の町を囲む湖を横切るダンテとウェルギリウス)』。ドラクロワが24歳の時に手がけたサロン初出品作品としても知られる本作は、当時画家が愛読していた13〜14世紀に活躍したイタリア文学史上最大の詩人ダンテ・アリギエーリの代表作≪神曲≫中、Inferno(地獄篇)第8歌の場面を描いた作品である。サロン出品時には
新古典主義の批評家ドレクリュースらから激しく批難されるものの、当時のフランスを代表する画家
アントワーヌ=ジャン・グロからは高く評価され、後に国家買い上げともなった本作では、画面中央へ赤い頭巾を身に着けた主人公のダンテと案内人である詩人ウェルギリウスが小船に乗り地獄の川を下ってゆく姿が配されているが、特に小船にしがみ付き這い上がろうとする亡者(死者)らと対峙するダンテの片手を上げながら恐怖を示す姿の激しい感情性は、観る者に本場面の強烈な印象を植え付けさせることに成功している。また地獄の川で浮き沈みを繰り返しながら小船へと這い上がってくる亡者(死者)たちの生々しい姿態や恐々とさせる表情には、
新古典主義的表現とは対照的な劇的情念を強く感じさせる。さらに本作が賛否両論を巻き起こす大きな要因ともなった登場人物らと、赤々と燃えるディテの街が印象的な背景との強く明確な色彩的対比とそれによる効果的表現や、各要素によって全体を三角形に展開させた躍動的で力動的な画面構成も本作の大きな注目点である。
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