2004/09/13掲載
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説教のあとの幻影(ヤコブと天使の闘い)(Vision après le sermon ou Lutte de Jacob avec l'ange) 1888年 | 73×92cm | 油彩・画布 | スコットランド王立美術館 関連:エミール・ベルナール作 『草地のブルターニュの女たち』 関連:ウジェーヌ・ドラクロワ作 『ヤコブと天使の戦い(部分)』 関連:葛飾北斎 『北斎漫画から力士図』
天使と格闘する、イスラエルの民の祖アブラハムの孫ヤコブ。本作に描かれるのは旧約聖書 創世記第32章 23-31節に記される≪天使とヤコブの戦い(イスラエルの命名)≫の場面を、フランスの最西端に突き出た半島(ブルターニュ地方)で開かれるパルドン祭で幻視する信仰厚き同地の女たちである。
【天使と格闘するヤコブの姿】
ポン=タヴェンの民族衣装を身に着けた女たち。伝統的な表現手法や印象派的手法では辿り着けないほど表現対象として純化されている本作の、画面手前で祈りを捧げる女たちの高い信仰心を感じさせる穏やかな表情の純朴性・純真性は、染み入るかのような深い感銘を観る者へと与える。
【民族衣装を身に着けた女たち】
完全に平面化された空間構成。エミール・ベルナールが制作した『草地のブルターニュの女たち』を見て、その実験的で革新的な表現手法≪クロワゾニスム≫に強く影響を受け、多大に刺激されたゴーギャンが、クロワゾニスムという表現手法を用いることによって「自然を模倣(写実的表現を)せず、己の内に感じるまま、ある種の抽象性を以って描く」という画家の絵画表現の本質が本作には具現化されている。
【完全に平面化された空間構成】
画面内へ唐突に配される樹木。日本の浮世絵からの影響を感じさせる、画面内へ唐突に配された一本の樹木の奇抜な配置や、強烈な色彩表現も本作の特筆すべき点のひとつであるほか、本作と草地のブルターニュの女たちとの色彩的対比(赤色と黄緑色)も注目に値する。
【画面内へ唐突に配される樹木】 |