Description of a work (作品の解説)
2011/09/28掲載
Work figure (作品図)
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ヤコブと天使の戦い

 1861年
(La lutte de Jacob avec l'ange)
751×485cm | 油彩・画布 | サン・シュルピス聖堂

フランス・ロマン主義最大の巨匠ウジェーヌ・ドラクロワ最晩年期の傑作『ヤコブと天使の戦い』。7点から構成されるパリのサン・シュルピス聖堂≪聖天使礼拝堂(サン・ザンジェ礼拝堂)≫装飾画の制作依頼を受けたドラクロワがふたりの信頼できる助手と共に12年の歳月をかけて手がけた本作は、旧約聖書 創世記36章24-32に記される≪ヤコブと天使の戦い≫を主題とした壁画作品である(東側壁面に描かれた)。本作の主題≪天使とヤコブの戦い(神とヤコブの戦い)≫は、兄エサウの怒りから叔父の許へ逃れていたイサクとリベカの次男ヤコブが、兄と和解するために妻ラケルと羊を連れ旅立った途中、ペヌエルの地の急流(ヤボク)を渡ることを天使に禁じられ一晩中(ヤコブと天使が)格闘をおこなうことになり、最後にはヤコブが勝利し、天使からイスラエルと名乗ることを許されたとされる逸話で、ドラクロワ自身は≪選ばれし者が神から与えられる試練≫の寓意との解釈を語っている。画面中央左側には鬱蒼とした森の中で天から遣わされる天使とヤコブが組み合い格闘する姿が配されており、ヤコブの足元には一本の剣が、その右下には(ヤコブ自身のであろう)旅の道具や衣服が鮮やかな色彩で描き込まれている。さらに画面右側には旅の一団が、画面上部には巨大な樹木が入念な筆捌きで描かれている。主題を自然の中で描く独創性(※本主題は建築物を背景にするのが一般的であった)やミケランジェロからの影響が指摘される天使とヤコブの隆々とした肉体表現、鮮烈な色彩表現などには結核性咽頭炎に罹っていた老齢の画家の衰えない創作精神を顕著に感じるほか、本主題の扱いから画家の孤高と苦悩に満ちた画業における刻苦の軌跡を暗示しているとも解釈することもできる。なお後期印象派の画家ポール・ゴーギャンは、傑作『説教のあとの幻影(ヤコブと天使の闘い)』の制作で本作からの影響を受けたとされている。

関連:ゴーギャン作 『説教のあとの幻影(ヤコブと天使の闘い)』


【全体図】
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遣わされた天使と格闘するヤコブ。本作の主題についてドラクロワ自身は≪選ばれし者が神から与えられる試練≫の寓意との解釈を語っており、そこから本作には画家の孤高と苦悩に満ちた画業における刻苦の軌跡が暗示されているとも解釈することもできる。



【天使と格闘するヤコブ】
色鮮やかな衣服や旅道具。画面中央左側には鬱蒼とした森の中で天から遣わされる天使とヤコブが組み合い格闘する姿が配されており、ヤコブの足元には一本の剣が、その右下には(ヤコブ自身のであろう)旅の道具や衣服が鮮やかな色彩で描き込まれている。



【色鮮やかな衣服や旅道具】
画面右側に描かれる旅の一団。主題を自然の中で描く独創性やミケランジェロからの影響が指摘される天使とヤコブの隆々とした肉体表現、鮮烈な色彩表現などには結核性咽頭炎に罹っていた老齢の画家の衰えない創作精神が顕著に感じられる。



【画面右側に描かれる旅の一団】

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