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テオドール・ジェリコー Jean Louis André Théodore Géricault
1791-1824 | フランス | ロマン主義
フランス・ロマン主義を代表する画家のひとり。同主義の先駆的存在としても知られる。確かな写実的描写力に裏打ちされた、厳しく劇的な明暗対比による光の表現や、激しさや感情の瞬間を捉えた躍動的な運動性、ドラマティックな場面展開などの表現を用いて、人物画、歴史画、事件的主題、風景画、動物画などを制作。画家の歴史画・事件的主題の作品の中に表現される(ロマン主義の大きな特徴である)死や病への態度、狂気性、異常性、叙情性は後世の画家らにも大きな影響を与えた。特に、公開時に物議と賛否を巻き起こした『
メデュース号の筏』や馬を描いた作品で名高い。1791年、パリで生まれ、当時、非常に人気の高かった動物画家カルル・ヴェルネの工房に入り絵画を学ぶ。その後、
新古典主義の画家ピエール=ナルシス・ゲランの教えに習いオルレアン美術館(現ルーヴル美術館)で
新古典主義の巨匠
ジャック=ルイ・ダヴィッドの作品や、
ルネサンス期
ヴェネツィア派の大画家
ティツィアーノ、
カラヴァッジョ、
ベラスケス、
ルーベンス、
ヴァン・ダイクなど過去の巨匠らの模写をおこない、激しい明暗法による劇的で写実的な表現による自身の様式を確立。1816年ローマ賞へ応募するも落選、翌年、自費でイタリアへと向かい、ローマとフィレンツェで
ミケランジェロの肉体表現に大きな影響を受ける。1817年に帰国し、1818年から1819年までは『
メデュース号の筏』の制作に没頭。同作品をサロンへ出品するも「政治批判の暗喩が示される」など(賞賛の声も多かったが)批判的な意見を多々受けるほか、政治的圧力を受け(『
メデュース号の筏』が人目に触れぬよう、ルーヴル美術館が意図的に買い取って作品を隠蔽した)失望。1820年から2年間、ロンドンへ渡り同地で制作活動をおこなう。1822年、落馬により障害を負う。1824年、それによりわずか33歳という若さで夭折した。なお画家のロマン主義な表現は、同派の偉大な画家
ウジェーヌ・ドラクロワにも影響を与えた。