2009/11/25掲載
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エビのある静物(大海老と狩りと釣りの獲物のある静物)(Nature morte au hommard) 1826-27年 81×107cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)
前景に配される大海老。ドラクロワが1825年の5月末から8月頃までの約2ヶ月強の間滞在した英国から帰国直後に制作され、1826-27年のサロンへ出品された本作は、牧歌的で雄大な風景の中へ赤々とした大海老(伊勢海老)、野鳥、野兎、猟銃、籠網などを配した≪静物画≫作品である。
【前景に配される大海老】 【仕留められた野鳥】
狩猟に用いたと思われる猟銃。やや唐突感すら見出すことができる(当時としては)特異的な構図や画面設計、各要素の構成こそドラクロワの野心的展開が示された本作の最も注目すべき点であり、画面全体から醸し出される雰囲気や様子には20世紀の前衛的芸術展開にも通じる、超現実主義(シュルレアリスム)的な印象すら受け取ることができる。
【狩猟に用いたと思われる猟銃】
コンスタブルの影響を感じさせる風景表現。画面中景から遠景にかけては英国絵画史上、最も重要な風景画家のひとりで同時代の英国を代表する画家ジョン・コンスタブルの様式を連想させる清々しく物語性を感じさせる風景が広がっており、画面前景の静物と不思議な違和を生み出している。
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