Description of a work (作品の解説)
2010/08/25掲載
Work figure (作品図)
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トラヤヌスの裁定(トラヤヌスの正義)


(La justice de Trajan) 1840年
490×390cm | 油彩・画布 | ルーアン美術館

フランスロマン主義の大画家ウジェーヌ・ドラクロワの歴史画作品のひとつ『トラヤヌスの裁定(トラヤヌスの正義)』。1840年のサロン出品作であり、画家自身も自信作と認めていた本作は、14世紀イタリアの最も重要な詩人兼哲学者であるダンテ・アリギエーリの傑作長編叙事詩≪神曲≫の煉獄篇 第10歌の場面≪皇帝トラヤヌスの裁定(正義)≫を主題とした作品である。本主題≪皇帝トラヤヌスの裁定≫は戦場に赴こうとする皇帝トラヤヌスの前に、殺害された己の息子の裁定を求める婦人が現れ、当初は彼女の訴えを疎んじていたものの、その話の正当性に気づき公平な裁定をおこなったとする≪高位者の謙虚性≫を表した内容で、本作では画面右側へ白馬に跨り戦場へ駆け出さんとする皇帝トラヤヌスが、画面左側下部へ皇帝へ必死に訴える婦人の姿が描き込まれ、その周囲には白馬を宥めようとする者、力ずくで婦人を退けようとする者、出立の喇叭を吹き鳴らす者など皇帝の様々な家臣らが配されている。本作で特に注目すべき点は激しい運動性による濃密で力動的な場面・人物描写と画面構成にある。16〜17世紀ヴェネツィア派に建築物の意匠を倣いながら、現在もローマ市内に現存する16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスの騎馬像に着想が得られるトラヤヌスの勇壮な姿や、大きく両手を広げる仕草で息子の死に対する激情的な感情を表す婦人の描写などはドラクロワ自身が自画自賛するのも頷けるほど秀逸な表現であり、今なお観る者の眼を惹きつける。なお本作は完成後、ボルドー市(後のルーアン市)のために国家の買い上げとなった。


【全体図】
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白馬に跨る皇帝トラヤヌス。本作は14世紀イタリアの最も重要な詩人兼哲学者であるダンテ・アリギエーリの傑作長編叙事詩≪神曲≫の煉獄篇 第10歌の場面≪皇帝トラヤヌスの裁定(正義)≫を主題とした作品である。



【白馬に跨る皇帝トラヤヌス】
皇帝に訴える婦人の感情的な姿。画面右側へ白馬に跨り戦場へ駆け出さんとする皇帝トラヤヌスが、画面左側下部へ皇帝へ必死に訴える婦人の姿が描き込まれ、その周囲には白馬を宥めようとする者、力ずくで婦人を退けようとする者、出立の喇叭を吹き鳴らす者など皇帝の様々な家臣らが配されている。



【皇帝に訴える婦人の感情的な姿】
ヴェネツィア派に倣う建築物。皇帝トラヤヌスの勇壮な姿や、大きく両手を広げる仕草で息子の死に対する激情的な感情を表す婦人の描写などはドラクロワ自身が自画自賛するのも頷けるほど秀逸な表現であり、今なお観る者の眼を惹きつける。



【ヴェネツィア派に倣う建築物】

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