2010/05/31掲載
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悔悛しない瀕死の病人に付き添う聖フランシスコ・ボルハ(San Francisco de Borja asiste a un Moribundo impenitente) 1815年 | 350×300cm | 油彩・板 | バレンシア大聖堂
涙を浮かべる聖フランシスコ・ボルハ。オスーナ公爵夫妻の依頼によって、バレンシア大聖堂にある同家の礼拝堂の祭壇画として制作された本作は、スペインの名門貴族ボルハ家出身のイエズス会士≪聖フランチェスコ(フランシスクス・ボルジア)≫が、瀕死の若者に付き添う姿を描いた作品である。
【涙を浮かべる聖フランシスコ・ボルハ】
鮮血が噴出す十字架像。悔悛をおこなわない若者が聖フランシスコ・ボルハの差し出す十字架に(悔悛の証である)口づけをしなかったのであろう、十字架からは鮮血が若者に向かって噴き出ている。
【鮮血が噴出す十字架像】
ベッドに横たわる瀕死の若者。本作の死を目前にしてなお悔悛せぬ若者と、若者の精神的象徴たる悪魔らの描写は、人間の精神に内包される暗く影がかった内面性の表れであり、その点の表出において最初期の作品として知られる本作は特に注目されている。
【ベッドに横たわる瀕死の若者】
若者の魂を狙う悪魔たち。本作の主題そのものにおいても、名門家出身ながら財産を全て放棄しイエズス会に入会した聖フランシスコ・ボルハには、イタリアへとイエズス会を追放したカルロス3世(1716-1788)に代表される権力者からの抑圧に対する強い関心を見出すことができる。
【若者の魂を狙う悪魔たち】 |