Description of a work (作品の解説)
2009/12/07掲載
Work figure (作品図)
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巨人

 (El coloso) 1808-1812年頃
116×105cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

長い間、スペイン・ロマン主義時代の巨匠フランシスコ・デ・ゴヤの作品とされてきた19世紀スペインの最も謎多き作品のひとつ『巨人』。かつては『パニック』とも呼称され、近年までゴヤの代表的な作品と見做されていたものの、2009年1月下旬、所蔵先であるプラド美術館は表現、様式、署名などを綿密に検証をおこなった結果、本作を弟子、又は追随者の作品であると結論付ける報告書が公表され、現在ではほぼゴヤ以外の作品として位置付けられている本作は、皇帝ナポレオンのスペイン侵攻に対してマドリッド市民が起こした反乱に端を発した≪対仏独立戦争≫の暴力、恐怖、混乱、そして(民衆の)抵抗を象徴的に表現した作品であると考えられている。画面上部にはスペインとフランスの国境に位置するピレネー山脈を連想させる荒涼とした山々が描かれているが、その中へ突如として表れたかのようにひとりの裸体の巨人が拳を硬く握り締め、立ち塞がるように描き込まれている。前景となる画面下部には人々や馬車、牛やロバなどの家畜が無数の群れとなって逃げ惑う情景が描かれている。本作の最も注目すべき点であり、また最も深き謎の部分でもある、描かれる巨人の解釈については、一般的にはファン・バウティスタ・アリアサの風刺詩「ピレネーの予言」の視覚化、ナポレオンへの恐怖、スペイン国民の守護、さらには戦争そのものの否定の象徴などの説が有力視されているものの、他にも当時の民衆歌の歌詞にある「見よ、青褪めた巨人が立ちがらんとするのを」の具現化説など諸説唱えられており、更なる研究が期待されている。

関連:銅版画 『巨人(エル・コローソ)』


【全体図】
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山々の上に聳え立つ巨人の姿。本作はかつて『パニック』とも呼称され、近年までゴヤの代表的な作品と見做されていたものの、2009年1月下旬、所蔵先であるプラド美術館は表現、様式、署名などを綿密に検証をおこなった結果、本作を弟子、又は追随者の作品であると結論付ける報告書が公表され、現在ではほぼゴヤ以外の作品として位置付けられている。



【山々の上に聳え立つ巨人の姿】
硬く握り締められた拳。画面上部にはスペインとフランスの国境に位置するピレネー山脈を連想させる荒涼とした山々が描かれているが、その中へ突如として表れたかのようにひとりの裸体の巨人が拳を硬く握り締め、立ち塞がるように描き込まれている。



【硬く握り締められた拳】
必死に逃げ惑う人々や家畜たち。本作は皇帝ナポレオンのスペイン侵攻に対してマドリッド市民が起こした反乱に端を発した≪対仏独立戦争≫の暴力、恐怖、混乱、そして(民衆の)抵抗を象徴的に表現した作品であると考えられている。



【必死に逃げ惑う人々や家畜たち】
山脈にかかる流れの速い雲。描かれる巨人の解釈については、一般的にはファン・バウティスタ・アリアサの風刺詩「ピレネーの予言」の視覚化、ナポレオンへの恐怖、スペイン国民の守護、さらには戦争そのものの否定の象徴などの説が有力視されている。



【山脈にかかる流れの速い雲】

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