2010/07/06掲載
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盲目のギター弾き(Ciego de la guitarra) 1778年260×311cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)
ギターを奏で高らかと歌い上げる盲人のギター弾き。本作は当時の皇太子夫妻(後のカルロス4世及びマリア・イルサ)の依頼により、同夫妻が住んでいたエル・パルド宮寝室の装飾用タピスリーのための原画(下絵)のひとつとして制作された作品で、画題に≪盲人の乞食的辻音楽師≫がギターを弾く姿を描いた画家の野心的側面の強い作品である。
【高らかと歌い上げる盲人】
盲人が伴う幼い子供の姿。登場人物の多さなどによってタピスリー工場から制作に不適当とされ、実際には単純化された画面構成にてタピスリー化された本作では、画面中央よりやや左側に幼く腕白な少年を伴いながら高らかとギターを奏で歌い上げる盲目の辻音楽士が描かれており、その表情は同氏の貧しさや境遇を強調するかのように歪んでいる。
【盲人が伴う幼い子供の姿】
周囲に集う様々な階級の人々。本作はゴヤの作品の中でも、社会的弱者が登場する最も初期の作品としても知られており、特に健常とは明らかに異なる≪盲人≫を扱ったことは、ある種の社会から除外された存在に対する画家の強い関心の表れとして認識することができる。
【周囲に集う様々な階級の人々】 |