Description of a work (作品の解説)
2010/12/06掲載
Work figure (作品図)
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サン・イシードロへの巡礼


(La romería de San Isidro) 1821-23年頃
140×438cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

ロマン主義の偉大なる巨匠フランシスコ・デ・ゴヤの個人に対する贈呈作品のひとつ『サン・イシードロへの巡礼』。1819年の2月にゴヤがマドリッド郊外マンサナレス河畔に購入し移り住んだ別荘≪聾の家(聾者の家)≫の壁画のひとつとして1階長壁面へ描かれた本作は、マドリッド出身の農夫であり同街の守護聖人としても知られる≪イシードロ(イシドルス)≫が近郊の泉から水を引き旱魃(かんばつ)を回避させたという奇跡を主題とした作品で、対の作品として『魔女の夜宴』が描かれている。マドリッド市民は毎年5月15日を祝日に制定し、この奇跡に基づき巡礼としてマンサナレス河畔へメリエンダ(ピクニック)をおこなっており、本作に描かれる光景もそれに准じているのではあるが、その印象たるや牧歌的な様子は皆無であり、陰鬱で狂々とした雰囲気が全体を支配している。画面中央から左側にかけて描かれた泉へ巡礼に向かう民衆の姿は、どこか狂気染みた表情を浮かべ、奏でられる音楽に合わせ歌う様子まるで絶望の淵に立たされた狂信的な人間を容易に連想させる。さらにこの狂乱的な最前景の人々とは対照的に列を成す数多くの中景の人々らの表情には諦観と陰鬱が感じられ、その感情的対比には旋律を覚えさせられる。本主題はゴヤが若い頃にも手がけているが、画面全体を絶望が覆うかのような暗く鬱蒼とした本作の光景には画家独特で見据えた国内の現状と自己の内面性の幻想化を見出すことができ、観る者を強く惹きつける。なお画面右側にはマドリッド王宮やエル・グランデ聖堂など同市を展望することができる。


【全体図】
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狂乱的な巡礼者たち。本作はマドリッド出身の農夫であり同街の守護聖人としても知られる≪イシードロ≫が近郊の泉から水を引き旱魃(かんばつ)を回避させたという奇跡を主題とした作品で、対の作品として『魔女の夜宴』が描かれている。



【狂乱的な巡礼者たち】
諦観しながら列を成す民衆。マドリッド市民は毎年5月15日を祝日に制定し、この奇跡に基づき巡礼としてマンサナレス河畔へメリエンダ(ピクニック)をおこなっており、本作に描かれる光景もそれに准じているのではあるが、その印象たるや牧歌的な様子は皆無であり、陰鬱で狂々とした雰囲気が全体を支配している。



【諦観しながら列を成す民衆】
マドリッド市内の展望。本主題はゴヤが若い頃にも手がけているが、画面全体を絶望が覆うかのような暗く鬱蒼とした本作の光景には画家独特で見据えた国内の現状と自己の内面性の幻想化を見出すことができ、観る者を強く惹きつける。



【マドリッド市内の展望】

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