2008/07/20掲載
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我が子を喰らうサトゥルヌス(黒い絵)(Saturno devorando a su hijo) 1820-23年頃 146×83cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) 関連:ルーベンス作 『我が子を喰らうサトゥルヌス』
我が子を貪り喰うサトゥルヌス。画家が1819年の2月にマドリッド郊外マンサナレス河畔に購入した別荘≪聾の家(聾者の家)≫の壁画のひとつとして別荘一階食堂の扉の右側に描かれた本作の主題は≪我が子を喰らうサトゥルヌス≫である。
【我が子を貪り喰うサトゥルヌス】
幼児の肉体から流れる生々しい血液。本作はバロック時代を代表する巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスの同主題の作品から強い影響を受けたと推測されているが、ルーベンスの作品と比較すると明らかに神話性が薄まっており、食人的行為(カニバリズム)の異常性が強調されていることに気付く。
【幼児の肉体から流れる生々しい血液】
痩せ衰えた怪物的なサトゥルヌスの身体。本作には晩年期に近づいていたゴヤが当時抱いていた不安、憂鬱、退廃、老い、死、など時代に対する思想や死生観、内面的心情が反映されていると考えられているものの、その根本部分の解釈は諸説唱えられており、現在も議論が続いている。
【痩せ衰えた怪物的なサトゥルヌス】 移植作業の際に塗りつぶされた性器部分。制作当時はサトゥルヌスの男性器が勃起した状態で描かれていたことが判明しており、これはサトゥルヌスが生命を奪い取る存在としてだけではなく、生命を与える存在であることも同時に意味している。
【移植の際に塗りつぶされた性器部分】 |