Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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フランチェスコ・アイエツ Francesco Hayez
1791-1882 | イタリア | ロマン主義




イタリア・ロマン主義を代表する画家。極めて高度な写実的描写の中で知的かつ抒情性溢れる感傷的精神を表現し独自的な世界観を構築。画家が手がけた作品群は不毛的であった19世紀イタリア美術界の中でも際立った出来栄えを示しており、同地の後世の画家たちに多大な影響を与えた。1791年、ヴェネツィアの貧しい一家に生を受け、幼い頃から素描などで画才を示し、青年期に同地ヴェネツィアで絵画の修行をおこなう。1809年、アカデミア美術館主宰の絵画品評会に入選し、翌1810年から1814年までローマに滞在。同地ではフランス新古典主義の巨匠ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルやカノーヴァに影響を受け、高い写実性と対象へ向ける鋭い観察精神を会得。その後、『アルキノオスの法廷にいるユリシーズ』を手がける為にナポリへ、さらに1820年からはミラノに移住し、以後、その生涯の殆どを同地で過ごす。ミラノでは王宮の天井装飾画や諸外国の宮廷からの肖像画制作の注文を受けるなど画家として確固たる地位を築いていったが、そこにはマンゾーニやロッシーニなど同地の知識人たちとの交流で得た19世紀中頃のイタリア統一運動的な道徳性や市民的精神が明確に示されている。晩年期にはブレラ美術学校長へ就任するものの、1882年、ミラノで死去。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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接吻(キス)

 (Il bacio) 1859年
112×88cm | 油彩・画布 | ブレラ美術館(ミラノ)

イタリア・ロマン主義の象徴的な作品としても知られる、19世紀イタリアの画家フランチェスコ・アイエツの傑作『接吻(キス)』。本作は中世風古城の階段の片隅(踊り場)で情熱的に接吻を交わす若い男女の姿を描いた作品である。画面中央へは品質の高さを感じさせる衣服を身に着けた身なりの良い娘が、(この娘と)身分不相応に感じられる質素な衣服と羽根付帽子を被った若い男に情熱的な接吻を受けている姿が描き込まれており、女性の方もその愛を受け入れるかのように男の肩に手を回している。しかし男の足下に視線を向けると片足を階段へ置き、すぐこの場から立ち去ることができるような仕草を示している点から、この男女の関係が祝福されたものではなく、禁断的な恋愛関係であることを窺い知ることができる。またそれは物音ひとつ感じさせない冷ややか空気が支配する男女の周囲の様子からも容易に連想することができる。アイエツ自身、非常に情熱家で恋愛に溺れる傾向が強かった性格の持ち主であった故、自身の経験にも基づいているのであろう本作の扇情的な抒情性は、観る者に恋愛的な感情性を強く訴えかける。さらに特筆すべき点は、本作の政治的解釈にある。同時代のイタリアはイタリア統一運動の真っ只中にあり、当時の首相カミッロ・カヴールがフランス皇帝ナポレオン3世と交わした同盟の寓意として本作の男女の禁断的関係を解釈することができる。なお男女が身に着ける衣服は、同時代を代表する作曲家ジュゼッペ・ヴェルディのオペラの衣装を再現したものであることが知られている。

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【全体図】
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