Description of a work (作品の解説)
2009/11/13掲載
Work figure (作品図)
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ポリュフェモスを愚弄するオデュッセウス


(Ulysses Deriding Polyphemus - Homer's Odyssey) 1829年
132.8×203cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

19世紀前半期の英国を代表する風景画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー転換期の傑作『ポリュフェモスを愚弄するオデュッセウス(ポリュフェモスを嘲笑するユリシーズ)』。ターナーが1828年から1829年にかけておこなったローマなどイタリア旅行から帰国した後に制作された作品である本作は、古代ギリシアの偉大なる詩人ホメロスの叙事詩≪オデュッセイア≫第9歌に記される、ひとつ目の巨人ポリュフェモスの棲む火山島に漂着した英雄オデュッセウス(ラテン語ではユリシーズ)一行がポリュフェモスに襲われかけるものの、巧みに酒宴を開き巨人が泥酔したところで眼を潰し火山島から脱出した場面を描いた作品である。画面中央よりやや左上には後景として泥酔したところで眼を潰され己が棲む島の上で横たわるポリュフェモスが描かれているが、その姿は火山の煙によって腕と脚程度しか見えず、顔面や胴体などは風景と同化している。そして画面のほぼ中央に火山島から脱出した英雄オデュッセウスの一行が乗る2隻の帆船が緻密な筆触によって丹念に描写されている。さらに画面右側に配される今まさに昇らんとする太陽の光によって本場面は劇的に照らし出されている。本作に示される彩度の高い純色的な色彩表現への傾倒や、伝統的で規範的なイタリア風の風景表現からの脱却と自身の様式への昇華には、画家の独自性を明確に感じることができ、19世紀英国の美術批評家ジョン・ラスキンも本作を「ターナーの画歴の中心をなす作品」に位置付けている。


【全体図】
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風景と溶け合うひとつ目の巨人ポリュフェモス。画面中央よりやや左上には後景として泥酔したところで眼を潰され己が棲む島の上で横たわるポリュフェモスが描かれているが、その姿は火山の煙によって腕と脚程度しか見えず、顔面や胴体などは風景と同化している。



【風景と溶け合う巨人ポリュフェモス】
巨人の棲む火山島から脱出する英雄オデュッセウスの一行。本作は、古代ギリシアの詩人ホメロスの叙事詩≪オデュッセイア≫に記される、英雄オデュッセウス一行が巨人ポリュフェモスに襲われかけるものの、巧みに酒宴を開き巨人が泥酔したところで眼を潰し火山島から脱出する場面を描いた作品である。



【脱出するオデュッセウス一行】
本場面を照らし出す朝の陽光。本作の彩度の高い純色的な色彩表現への傾倒や、伝統的で規範的なイタリア風の表現からの脱却と自身の様式への昇華には、画家の独自性を明確に感じることができ、19世紀英国の美術批評家ジョン・ラスキンも本作を「ターナーの画歴の中心をなす作品」に位置付けている。



【本場面を照らし出す朝の陽光】

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