2009/11/27掲載
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宵の明星(The evening star (Vesper)) 1830年92×122.5cm | 油彩・画布 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー 暮れる太陽が作り出す微妙な色彩の変化。本作はターナーが独自の表現様式を開眼させたイタリア旅行後に制作された、画家が強い愛着を抱いていた故郷ロンドンを流れるテムズ川の河口付近での漁の光景を画題とする作品である。
【微妙な色彩の変化】
漁を終え帰路へとつく漁師の少年。当時の批評として「何も苦心も感じさせないが、芸術的観点からは真に称賛されるべき作品である」と述べられているよう、そこに描かれる閑散かつ静寂とした雰囲気や微妙に変化する夕暮れの陽光の色彩など注目すべき点は多い。
【帰路へとつく漁師の少年】
テムズ川水面の深い色調。空、水面、そして赤茶けた浜辺へと続く色彩の繊細で多様な変化は薄い半透明の色を何層にも重ねる技法を用いた表現手法であり、そこには画家の技量的成熟を強く感じることができる。
【テムズ川水面の深い色調】 |