Description of a work (作品の解説)
2009/2/28掲載
Work figure (作品図)
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水の戯れ、旅

 (Jeux d'eau ou Le Voyage) 1906-10年
250×300cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

親密派(アンティミスム)を代表する画家ピエール・ボナール1930年代の傑作『水の戯れ、旅』。本作は雑誌「ルヴュ・ブランシュ」の主催者タデ・ナタンソンの元妻で、「ル・マタン」氏の発刊者であるアルフレッド・エドワルスと再婚したミシア・エドワルスの依頼により、同夫妻の住むパリ中心部ヴォルテール河岸21番地のアパルトマンの食堂を飾る4枚の連作装飾パネルの中の1点で、≪水と旅≫を理想郷的に表現した作品である。本連作の依頼主であるミシアはボナールのほかエドゥアール・ヴュイヤールモーリス・ドニなどナビ派の画家の良き理解者のひとりであり庇護者でもあった人物で、画家が本作に4年もの歳月を費やしていることからもボナールの同時期を代表する作品として重要視されている(完成した1910年には「ある全体を成す装飾パネル」との名称でサロン・ドートンヌに出品されている)。画面下部中央には水浴の女性として海獣と戯れる上半身が人間(女性)の下半身が鳥の姿をした海の妖鳥シレーヌ(英語ではセイレーン)が官能的な姿で描かれている。その右側にはシノワズリ(中国趣味)を思わせる果実の生る樹の下の中国官吏(マンダリン)が、左側には帆船に乗る人々が配されており、そして画面奥には陽光で燦々と輝く異国的な街並みが広がっている。本作で最も注目すべき点は快楽(享楽)的で楽園化された海景図の色鮮やかな色彩と装飾性豊かな枠の表現にある。海景の深遠で清々とした青色と補色関係にある橙色を枠の色彩に用いることによって、画面の中に明確な色彩的対比と彩度的調和を同時に生み出すことに成功している。また猿やカササギを平面的に描写した装飾的な枠の表現は幻想的であるほか、中世のタピスリー的な雰囲気も感じさせる。なお本作の順序は諸説考えられているものの、一般的にはマーグ画廊が所蔵する『歓喜』、本作『水の戯れ、旅』、池田20世紀美術館が所蔵する『大洪水(洪水の後)』、ポール・ゲッティ美術館所蔵の『浴女たちのいる風景』とされている。

関連:マーグ画廊所蔵 『歓喜』
関連:池田20世紀美術館 『大洪水(洪水の後)』


【全体図】
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海獣と戯れるシレーヌの姿。ミシア・エドワルスの依頼により、同夫妻の住むパリ中心部ヴォルテール河岸21番地のアパルトマンの食堂を飾る4枚の連作装飾パネルの中の1点で、≪水と旅≫を理想郷的に表現した作品である。



【海獣と戯れるシレーヌの姿】
陽光によって燦々と輝く異国的な街並み。本連作の依頼主であるミシアはボナールなどナビ派の画家の良き理解者のひとりであり庇護者でもあった人物で、画家が本作に4年もの歳月を費やしていることからもボナールの同時期を代表する作品として重要視されている。



【陽光によって燦々と輝く異国的な街】
シノワズリ(中国趣味)を思わせる樹の下の中国官吏。海景の深遠で清々とした青色と補色関係にある橙色を枠の色彩に用いることによって、画面の中に明確な色彩的対比と彩度的調和を同時に生み出すことに成功している。また猿やカササギを平面的に描写した装飾的な枠の表現は幻想的であるほか、中世のタピスリー的な雰囲気も感じさせる。



【シノワズリを思わせる中国官吏】

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