Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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エドゥアール・ヴュイヤール Edouard Vuillard
1868-1940 | フランス | 後期印象派・ナビ派・親密派




ナビ派・親密派を代表する画家のひとり。大胆に切断される個性的な構図展開や短縮法、調和性を重要視した色彩表現などの手法を用いて繊細で装飾性の高い絵画作品を制作。同時代の画家の中でも重要な位置につけられているほか、装飾家としても非常に高い評価を受けている。また日常生活や室内、街角などの画題に注目した独自の作品展開でピエール・ボナールと共に≪親密派(アンティミスム:装飾性と平面性を融合させた表現様式で、物語性の希薄な日常の室内生活空間を画題とする作品を手がけた画派)≫の画家としても名高い。1868年、フランスのキュイゾーに生まれ、パリのリセ・コンドルセ(コンドルセ高等学校)に入学し同校でモーリス・ドニ、ルーセル、リュニェ=ポーと出会う。1888年から一時エコール・デ・ボザール(官立美術学校)で学ぶものの、まもなくアカデミー・ジュリアンへと移り、そこでピエール・ボナールと知り合い、同氏やポール・セリュジエモーリス・ドニフェリックス・ヴァロットンなどとナビ派を結成する。その後、ポール・ゴーギャンからクロワゾニスムを用いた総合主義的表現や日本美術からの影響を強く受けながら独自の様式を形成。その後、代表作『公園』やリュニェ=ポーの舞台作品の装置や衣装のデザインを手がけるなど精力的に制作活動をおこなう。1903年、ボナールやアンリ・マティス、ジョルジュ・ルオーなどと共にサロン・ドートンヌの設立に参加。晩年はドイツ軍のフランス侵攻を逃れる為に南仏ブルターニュの地へ避難していたが、1940年に同地で死去。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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公園(遊ぶ子供たち、問いかけ、乳母、会話、赤い傘)


(Jardins publics (Fillettes jouant, L'interrogatoire, Les nourrices, La conversation, L'ombrelle rouge)) 1894年頃
各作品による | 泥絵具・画布 | オルセー美術館(パリ)

エドゥアール・ヴュイヤールの代表作『公園(遊ぶ子供たち、問いかけ、乳母、会話、赤い傘)』。泥絵具(デトランプ、テンペラの一種)を用いて制作された本作は、前衛芸術としてナビ派を擁護していた雑誌「ルヴュ・ブランシュ」の主催者タデ・ナタンソンの兄アレクサンドル・ナタンソンの依頼により、同氏の自宅の食堂の装飾画として制作された9点1組のパネル作品≪公園≫の中でオルセー美術館が所蔵する5作品(左から)『遊ぶ子供たち(215×88cm)』、『問いかけ(215×92cm)』、『乳母(213×73cm)』、『会話(213×154cm)』、『赤い傘(214×81cm)』である。本5作品は制作から約35年経過した後の1929年に売却された際、オルセー美術館へと収蔵された作品(他4作品は分散)で、作品群の名称ともなっている≪公園≫の中での日常的な情景が各パネルには描かれている。本項で紹介する5作品の最左の作品『遊ぶ子供たち』では中景に走り回る子供たちが描かれ、前景にはその親であろう二人の婦人らが長椅子に座り談笑している。さらにその前には一本の樹木が配されており画面展開的な面白さを付与している。『問いかけ』では母親らしき婦人が飾り帽子を被る子供に何か声をかけている姿が画題となっており、『遊ぶ子供たち』と『問いかけ』は背景などの繋がりから隣り合う作品であったことをうかがい知ることができる。一方、『乳母』、『会話』、『赤い傘』の3作品は背景の柵などから同一の視点・構図によって画面が展開しているものの、地面に落ちる影などの繋がりが認められない点から個々が独立していることがわかる。何れの作品も日本の版画を思わせるような平面性や明確な輪郭線が顕著に示されているほか、隣り合う色面の優れた調和性や光に満ちた明瞭な色彩など、本作では日常的な画題を装飾性豊かに扱ったヴュイヤール作品の特徴を随所に感じることができる。

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【全体図】
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3つのランプのあるサロン、サン=フロランタン通り


(Le Salon aux trois Lampes, rue Saint-Florentin) 1899年
59×95cm | 泥絵具・紙(画布貼付) | オルセー美術館(パリ)

親密派を代表する画家エドゥアール・ヴュイヤールの重要な作品『3つのランプのあるサロン、サン=フロランタン通り』。本作は画家が所属するナビ派を擁護していた芸術雑誌「ルヴュ・ブランシュ」の主催者で、ヴュイヤールと非常に友好的な関係にあったタデ・ナタンソンと、その妻ミシアが住むサン=フロランタン通り沿いのアパルトマンの一室(サロン)を描いた作品である。このサロンはルヴュ・ブランシュと呼ばれた、画家、詩人、文学者、音楽家、記者、蒐集家などで構成される芸術集団がしばしば集っていたことが知られており、ヴュイヤールもこのサロンを画題とした作品を数点制作している。本作はその中の1点であるが、本作には親密派(アンティミスム:装飾性と平面性を融合させた表現様式で、物語性の希薄な日常の室内生活空間を画題とする作品を手がけた画派)と呼ばれた画家の独自的な室内表現の様式的な昇華が示されている。画面左側に妻ミシア、中央に劇作家ロマン・クーリュス、そして右側にタデ・ナタンソンが配されており、各々が読書するなど寛いだ様子で描かれている。特にナタンソン夫妻の傍には黄色の笠が付いたランプが置かれており、穏やかな光源となって室内を柔らかく照らしている。また画面内には観葉植物やピアノ(妻ミシアはピアノ演奏家であった)、家具、絨毯など調和的に配されており、このサロンの居心地の良さを演出している。このように部分のみに注目すると非常に温和的な様子であるにも拘らず、画面全体では、どこか余所余所しさを感じさせる独特の静寂さが支配していることに気付く。これは描かれる3人の人物が個としての様子・要素を強く含んでいる為であるが、それらが強調され過ぎず他の構成要素と絶妙な調和を生み出している最も大きな要因となっているのは、対象の形状を曖昧にさせる個性的な筆触と滲み出るような色彩表現であり、これこそ画家の室内画の様式的な昇華なのである。

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Work figure (作品図)


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