Description of a work (作品の解説)
2008/09/18掲載
Work figure (作品図)
■ 

3つのランプのあるサロン、サン=フロランタン通り


(Le Salon aux trois Lampes, rue Saint-Florentin) 1899年
59×95cm | 泥絵具・紙(画布貼付) | オルセー美術館(パリ)

親密派を代表する画家エドゥアール・ヴュイヤールの重要な作品『3つのランプのあるサロン、サン=フロランタン通り』。本作は画家が所属するナビ派を擁護していた芸術雑誌「ルヴュ・ブランシュ」の主催者で、ヴュイヤールと非常に友好的な関係にあったタデ・ナタンソンと、その妻ミシアが住むサン=フロランタン通り沿いのアパルトマンの一室(サロン)を描いた作品である。このサロンはルヴュ・ブランシュと呼ばれた、画家、詩人、文学者、音楽家、記者、蒐集家などで構成される芸術集団がしばしば集っていたことが知られており、ヴュイヤールもこのサロンを画題とした作品を数点制作している。本作はその中の1点であるが、本作には親密派(アンティミスム:装飾性と平面性を融合させた表現様式で、物語性の希薄な日常の室内生活空間を画題とする作品を手がけた画派)と呼ばれた画家の独自的な室内表現の様式的な昇華が示されている。画面左側に妻ミシア、中央に劇作家ロマン・クーリュス、そして右側にタデ・ナタンソンが配されており、各々が読書するなど寛いだ様子で描かれている。特にナタンソン夫妻の傍には黄色の笠が付いたランプが置かれており、穏やかな光源となって室内を柔らかく照らしている。また画面内には観葉植物やピアノ(妻ミシアはピアノ演奏家であった)、家具、絨毯など調和的に配されており、このサロンの居心地の良さを演出している。このように部分のみに注目すると非常に温和的な様子であるにも拘らず、画面全体では、どこか余所余所しさを感じさせる独特の静寂さが支配していることに気付く。これは描かれる3人の人物が個としての様子・要素を強く含んでいる為であるが、それらが強調され過ぎず他の構成要素と絶妙な調和を生み出している最も大きな要因となっているのは、対象の形状を曖昧にさせる個性的な筆触と滲み出るような色彩表現であり、これこそ画家の室内画の様式的な昇華なのである。


【全体図】
拡大表示
室内を穏やかに照らすランプ。本作は画家が所属するナビ派を擁護していた芸術雑誌「ルヴュ・ブランシュ」の主催者で、ヴュイヤールと非常に友好的な関係にあったタデ・ナタンソンと、その妻ミシアが住むサン=フロランタン通り沿いのアパルトマンの一室(サロン)を描いた作品である。



【室内を穏やかに照らすランプ】
椅子に座り読書する妻ミシア。画面左側に妻ミシア、中央に劇作家ロマン・クーリュス、そして右側にタデ・ナタンソンが配されており、各々が読書するなど寛いだ様子で描かれている。特にナタンソン夫妻の傍には黄色の笠が付いたランプが置かれており、穏やかな光源となって室内を柔らかく照らしている。



【椅子に座り読書する妻ミシア】
木製の揺り椅子に座る劇作家ロマン・クーリュス。個としての人物が強調され過ぎず他の構成要素と絶妙な調和を生み出している最も大きな要因となっているのは、対象の形状を曖昧にさせる個性的な筆触と滲み出るような色彩表現である。



【木製の揺り椅子に座るクーリュス】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ