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フェリックス・ヴァロットン Félix Edouard Vallotton
1865-1925 | スイス | 後期印象派・ナビ派
19世紀末頃からフランスで活躍したスイス出身の画家。ナビ派の一員。1890年代後半から単純化された斬新な白黒による木版画や、実験的要素の強い奇抜で幻覚的な構図・展開による油彩画を制作し、フランス美術界の中で頭角を現す。特に線的で大胆な木版画は19世紀末の平面芸術(グラフィックアート)界に新たな可能性を示したほか、画家の手がけた油彩画は後の超現実主義(シュルレアリスム)を予感させた。裸婦や風景画を主な画題としているが、肖像画や静物画でも優れた作品を残している。ヴァロットンの平面的な表現や明確な輪郭線、素朴な様式、奇抜と調和が混在した造形と色面の対比的描写には、画家が感銘を受けていた
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、
アンリ・ルソー、
フィンセント・ファン・ゴッホらの影響も指摘されている。1865年にスイスのローザンヌに生まれ、1882年からパリへ出る。翌1883年にアカデミー・ジュリアンへ入り、そこで
ピエール・ボナールや
ポール・セリュジエ、
モーリス・ドニ、ポール・ランソンらと親交を結ぶ。1890年、パリで開催されていた日本版画展を見て大きな影響を受ける。1893年、アンデパンダン展へ初期の代表作「夏の宵の水浴」を出品、大きな話題となる(その殆どが酷評)ほか
エドゥアール・ヴュイヤールと知り合う。1897年、本格的にナビ派へ参加し「外人のナビ」と呼ばれるようになる。同年ルヴュ・ブランシュ誌に掲載された木版画が大好評となる。1900年、フランスへ帰化。この頃から油彩画に専念するようになる。以後、生涯描き続けた裸婦や風景画、家庭的な風俗画、静物画など数多くの作品を精力的に制作するも、1925年にパリで死去。