Description of a work (作品の解説)
2008/10/08掲載
Work figure (作品図)
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ボール

 (Le Ballon) 1899年
48×61cm | 不透明水彩・揮発油・厚紙 | オルセー美術館

19世紀末頃から20世紀初頭にかけて活躍した画家フェリックス・ヴァロットン最大の代表作『ボール』。本作はフランスのヴィルヌーヴ=シュル=ヨンヌにあったナタンソン夫妻(※夫タデ・ナタンソンはナビ派を擁護していた雑誌「ルヴュ・ブランシュ」の主催者でもある)の別荘≪ルレ≫の庭園での情景を描いた作品である。近年、2点の写真を基に画面が構成されていることが指摘されている本作では画面中央からやや右下に帽子を被った子供が赤いボールを追いかける姿が配され、その対角線上となる画面左上には婦人らしき人物が2人描かれている。この内、白い衣服を身に着けた女性は別荘≪ルレ≫の所有者であるタデ・ナタンソンの妻ミシアであると考えられている。本作で最も注目すべき点は、構図、色彩、光彩、構成要素などの対比的な展開にある。ボールを追いかける少女が配される左下から右上にかけては平面的な黄土色の面で覆われており、画面上部の濃緑色で描かれる芝生や木々の葉と見事な色彩的対比を示している。またこの両者(ボールを追いかける子供と2人の婦人)の対比は子供の世界と大人の世界という世界観や、運動(走る運動動作と立ち止まる不動動作)関係の対比としても考えられ、さらにそこから描かれる少女は、大人の世界から迫る、ヴァロットンの大きな特徴である明暗対比の大きな陰影から逃げるような幻覚的で物語的な感覚を観る者は受け取ることができる。また大胆な余白の展開には日本美術の影響が指摘されているなど、本作には当時のヴァロットンのナビ派としての独自的な表現が随所に示されており、今なお画家の代表作として第一に挙げられる。


【全体図】
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ボールを追いかける帽子を被った子供。本作はフランスのヴィルヌーヴ=シュル=ヨンヌにあったナタンソン夫妻の別荘≪ルレ≫の庭園での情景を描いた作品で、近年、2点の写真を基に画面が構成されていることが指摘されている。



【ボールを追いかける帽子を被った子供】
画面の中でアクセントとなる赤いボール。ボールを追いかける少女が配される左下から右上にかけては平面的な黄土色の面で覆われており、画面上部の濃緑色で描かれる芝生や木々の葉と見事な色彩的対比を示している。



【画面の中でアクセントとなる赤いボール】
木々の茂る庭で会話する2人の婦人。この両者(ボールを追いかける子供と2人の婦人)の対比は子供の世界と大人の世界という世界観や、運動(走る運動動作と立ち止まる不動動作)関係の対比としても考えられる。



【木々の茂る庭で会話する2人の婦人】

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