Description of a work (作品の解説)
2008/05/07掲載
Work figure (作品図)
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ベートーヴェン・フリーズ≪第3場面−歓喜・接吻≫


(Beethovenfries - Freude / Der kuβ) 1902年
高さ216cm | ガゼイン・塗料・漆喰・塗金 | 分離派館

ウィーン分離派最大の画家グスタフ・クリムト随一の大作『ベートーヴェン・フリーズ』から≪第3場面−歓喜・接吻≫。1902年に開催された第14回分離派展への出品作である本作は、18-19世紀に活躍した古典派最後の、そしてロマン派最初の大音楽家であり、その偉大な功績から楽聖とも呼称されるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが手がけた最後にして最大の交響曲≪交響曲第9番≫の≪第4楽章−歓喜の歌≫を絵画化した作品である。第14回分離派展は、分離派の画家たちと交友のあった世紀末ドイツの芸術家マックス・クリンガーが制作したベートーヴェン像を中心に、楽聖ベートーヴェンを称え称賛するために企画され開催された展示会で、クリムトは同展において交響曲第9番を絵画化した大壁画『ベートーヴェン・フリーズ』として楽聖に対し敬意を表した。この『ベートーヴェン・フリーズ』は≪第1場面−幸福への憧れ・弱き人間の苦悩・武装した強者に対する弱者の哀願≫、≪第2場面−敵対する勢力≫、そして本作≪第3場面−ポエジーに慰めを見出す憧れ(詩)・歓喜(天使たちの歓喜のコーラス)・接吻≫の3場面によって構成され、第14回分離派終了後は撤去される(取り壊される)ことになっていたものの、当時、美術愛好家であったカール・ライニングハウスに買い上げられ、現在ではオーストリア美術館の分離派館に移築保存されている。公開当時、批評家や新聞・雑誌から「卑猥で醜悪」と多くの批判を受けたものの、本作にはクリムトが探求した理想美の到達点が示されている。画面左部分には≪第4楽章−歓喜の歌≫として用いられたドイツ古典派を代表する詩人フリードリヒ・クリストフ・フォン・シラーによる詩≪歓喜に寄す≫を女性たちが高らかに謳い上げる姿が描かれており、この女性らの秩序正しく配列された正面性の高い表現は、表現主義の先駆者フェルディナント・ホドラーが前年(1901年)の分離派展へ出品した『神に選ばれし者』からの影響を感じさせる。画面右部分には≪歓喜に寄す≫の一句「抱き合おう、諸人よ!喜びよ!神々の炎よ!この接吻を全世界に!」の場面として、抱擁し接吻する男女の姿が配されている。取り壊す予定であったにも係わらず高価な金泥を用い、装飾性・詩情性豊かに描写される本場面の、美への至上の喜びとも解釈できる独特の繊細かつ豪壮な表現様式は、クリムトの美的世界の到達点であり、愛と感動に満ち溢れている。なお『第3場面−ポエジーに慰めを見出す憧れ≪詩≫』はクリムトの初期作『音楽 I(1895年)』から姿態が引用されている。

関連:『第3場面−ポエジーに慰めを見出す憧れ≪詩≫』部分
関連:ノイエ・ピナコテーク所蔵 『音楽 I』
関連:フェルディナント・ホドラー作 『神に選ばれし者』


【全体図】
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細くしなやかな線で表現される構成要素。1902年に開催された第14回分離派展への出品作である本作は、その偉大な功績から楽聖とも呼称されるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが手がけた最後にして最大の交響曲≪交響曲第9番≫の≪第4楽章−歓喜の歌≫を絵画化した作品である。



【細くしなやかな線で表現される各要素】
高らかに歓喜の歌を謳い上げる女性たち。この女性らの秩序正しく配列された正面性の高い表現は、表現主義の先駆者フェルディナント・ホドラーが前年(1901年)の分離派展へ出品した『神に選ばれし者』からの影響を感じさせる。



【歓喜の歌を謳い上げる女性たち】
抱き合い接吻する一組の男女。画面右部分にはドイツ古典派を代表する詩人フリードリヒ・クリストフ・フォン・シラーによる詩≪歓喜に寄す≫の一句「抱き合おう、諸人よ!喜びよ!神々の炎よ!この接吻を全世界に!」の場面として、抱擁し接吻する男女の姿が配されている。



【抱き合い接吻する一組の男女】
高価な金泥を用いた装飾性の高い表現。装飾性・詩情性豊かに描写される本場面の、美への至上の喜びとも解釈できる独特の繊細かつ豪壮な表現様式は、クリムトの美的世界の到達点であり、愛と感動に満ち溢れている。



【高価な金泥を用いた装飾性の高い表現】

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