Description of a work (作品の解説)
2008/05/08掲載
Work figure (作品図)
■ 

希望 I

 (Hoffnung I) 1903年
180×67cm | 油彩・画布 | カナダ国立美術館(オタワ)

オーストリア最大の画家のひとりグスタフ・クリムトの母性を感じさせる代表作『希望 I』。本作に描かれるのは赤毛の髪を翻し、こちらを向く裸体の妊婦の姿で、制作された1903年の分離派展へと出品が予定されていたものの、このあまりにも直接的な妊婦の、しかも裸体での表現ゆえに大きな物議を醸し、検閲官からは「卑猥である」と拒絶されたことでも知られている。本作は画家のお気に入りのモデルであったヘルマが妊娠し、妊娠中はクリムトの期待には応えられないと画家のモデルの依頼に関して断りを入れるも、クリムトが無理を言って説得し、ヘルマも了承。そして妊娠姿のヘルマに典拠を得て≪希望≫という作品が誕生したという伝説的な逸話も残されてるが、真相が不明である。画面右側にほぼ全身像で描かれる裸体の妊婦は胸に手を置き、本作を観る者へと視線を向けている。その姿は異様で、極端に腹部が出たその妊婦の姿の解釈については、画家自身が「彼女も、そして彼女が見るものも全てが醜悪である。」と説明しているが、続けて「しかし彼女の内部(腹部)には、輝くように美しいものが、そう、≪希望≫が育っているのである。彼女はそれを訴えているのだ。」という言葉も残している。このように本作は妊婦が宿した小さな生命の≪希望≫が表現されているものの、妊婦の背後に骸骨や陰鬱な顔が忍び寄るかのように並んでおり、≪希望≫と同時に、それと必ず隣り合う≪死≫や≪病≫、そして≪絶望≫も示されている。また本作の表現を考察しても、右側へ配される妊婦の白い肌と、左側の巨大な鯰(ナマズ)やオタマジャクシ(又は精子の暗喩)を思わせる黒い生物、画面下部の抽象的な青色と赤色など明暗的・色彩的対比、そして画面全体の平面的な装飾構成は特筆に値する出来栄えである。なおクリムトは1907-08年に同主題の作品『希望 II』を制作している。

関連:ニューヨーク近代美術館所蔵 『希望 II』


【全体図】
拡大表示
本作を観る者へと視線を向ける裸体の妊婦。本作に描かれるのは黄金の髪を翻し、こちらを向く裸体の妊婦の姿で、制作された1903年の分離派展へと出品が予定されていたものの、このあまりにも直接的な妊婦の、しかも裸体での表現ゆえに大きな物議を醸し、検閲官からは「卑猥である」と拒絶された。



【本作を観る者へと視線を向ける妊婦】
小さな生命が宿る妊婦の腹部。妊婦の姿の解釈については、画家自身が「彼女も、そして彼女が見るものも全てが醜悪である。」と説明しているが、続けて「しかし彼女の内部には、輝くように美しいものが、そう、≪希望≫が育っているのである。彼女はそれを訴えているのだ。」という言葉も残している。



【小さな生命が宿る妊婦の腹部】
母子に忍び寄る≪死≫や≪病≫。本作は妊婦が宿した小さな生命の≪希望≫が表現されているが、その背後に骸骨や陰鬱な顔が忍び寄るかのように並んでおり、≪希望≫と必ず隣り合う≪死≫や≪病≫、そして≪絶望≫も示されている。



【母子に忍び寄る≪死≫や≪病≫】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ