2008/05/08掲載
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希望 I(Hoffnung I) 1903年180×67cm | 油彩・画布 | カナダ国立美術館(オタワ) 関連:ニューヨーク近代美術館所蔵 『希望 II』
本作を観る者へと視線を向ける裸体の妊婦。本作に描かれるのは黄金の髪を翻し、こちらを向く裸体の妊婦の姿で、制作された1903年の分離派展へと出品が予定されていたものの、このあまりにも直接的な妊婦の、しかも裸体での表現ゆえに大きな物議を醸し、検閲官からは「卑猥である」と拒絶された。
【本作を観る者へと視線を向ける妊婦】
小さな生命が宿る妊婦の腹部。妊婦の姿の解釈については、画家自身が「彼女も、そして彼女が見るものも全てが醜悪である。」と説明しているが、続けて「しかし彼女の内部には、輝くように美しいものが、そう、≪希望≫が育っているのである。彼女はそれを訴えているのだ。」という言葉も残している。
【小さな生命が宿る妊婦の腹部】
母子に忍び寄る≪死≫や≪病≫。本作は妊婦が宿した小さな生命の≪希望≫が表現されているが、その背後に骸骨や陰鬱な顔が忍び寄るかのように並んでおり、≪希望≫と必ず隣り合う≪死≫や≪病≫、そして≪絶望≫も示されている。
【母子に忍び寄る≪死≫や≪病≫】 |