Description of a work (作品の解説)
2008/05/07掲載
Work figure (作品図)
■ 

牧歌

 (Idylle) 1884年
50×74cm | 油彩・画布 | ウィーン市立歴史美術館

ウィーン分離派の巨匠グスタフ・クリムトの芸術商会(芸術カンパニー)時代を代表する作品のひとつ『牧歌』。本作は1882年から1885年にかけて編集者マルティン・ゲルラッハによって出版された書物≪寓意と象徴(アレゴリーとエンブレム)≫の挿絵の原画のひとつとしてクリムトに依頼され制作された作品の中の1点である。クリムトは≪寓意と象徴≫の挿絵制作において、ルネサンス期の偉大なる大画家たちを始め、過去の巨匠らの作品から着想を得て制作をおこなっているが、本作では特にルネサンス三大巨匠のひとりミケランジェロからの肉体表現的影響を顕著に感じさせる。画面中央のトンド(円形)には優美な裸体で描かれるミューズが鳥の巣を手に取り、その中の卵を2人の子供に見せている。この牧歌的で生命的息吹を感じさせる表現も特筆に値する出来栄えであるが、本作では何と言っても画面の左右に配される裸体の羊飼いの隆々とした肉体的表現に注目したい。筋肉のひとつひとつまで克明に描写される羊飼いらの肉体の人間味に溢れた逞しい表現は、あたかもルネサンスの彫刻を思わせるほど迫真性に満ちている。そして、その中で男性の裸体から微かに匂い立つエロティックな官能性や神秘性は、後にクリムトが辿り着く独自の象徴的絵画表現を予感させる。この点において本作は、画家の象徴主義への萌芽的作品のひとつに位置付けられている。


【全体図】
拡大表示
鳥の巣の卵を子供に見せる裸体のミューズ。本作は1882年から1885年にかけて編集者マルティン・ゲルラッハによって出版された書物≪寓意と象徴(アレゴリーとエンブレム)≫の挿絵の原画のひとつとしてクリムトに依頼され制作された作品の中の1点である。



【鳥の巣の卵を子供に見せるミューズ】
端整な面持ちをした羊飼いの姿。クリムトは≪寓意と象徴≫の挿絵制作において、ルネサンス期の偉大なる大画家たちを始め、過去の巨匠らの作品から着想を得て制作をおこなっているが、本作では特にルネサンス三大巨匠のひとりミケランジェロからの肉体表現的影響を顕著に感じさせる。



【端整な面持ちをした羊飼いの姿】
人間味に溢れた逞しい肉体表現。筋肉のひとつひとつまで克明に描写される羊飼いらの肉体表現は、まるでルネサンスの彫刻を思わせるほど迫真性に満ちており、その中で男性の裸体から微かに匂い立つエロティックな官能性や神秘性は、後にクリムトが辿り着く独自の象徴的絵画表現を予感させる。



【人間味に溢れた逞しい肉体表現】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ