Description of a work (作品の解説)
2008/05/07掲載
Work figure (作品図)
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ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)


(Nuda Veritas) 1899年 | 252×56.2cm
油彩・画布 | ウィーン国立図書館演劇コレクション

ウィーン分離派の巨匠グスタフ・クリムトが19世紀中に手がけた作品の中で随一の傑作として知られる代表作『ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』。本作に描かれるのは、真実を映す水晶(又は鏡)を手にする裸体の女性であるが、露骨に裸体を表現したことで公開当時、保守的な人々や伝統主義者らから大批判を浴びた(ただし賛美者も少なくなかった)。本作同様、画家の代表作である、前年に手がけられた『パラス・アテネ(パラス・アテナ)』では、女神アテネは分離派と対立していた伝統主義者らと戦うかの如く、黄金の甲冑を身に着け武装した姿で描かれていたものの、本作ではその鎧を脱ぎ捨て、ひとりの女性の裸体を描くことによって、クリムトの自身が探求する芸術の≪真実(真理)≫が宣言されている。本作に描かれる裸体の女性の解釈については、一般的に画家が探求する芸術の真実の擬人化とする説が採用されているが、画面下部に蒲公英(タンポポ)が描かれていることから、新たに芽吹いた芸術である分離派の聖なる春を象徴する女神ヴィーナスとする説など諸説唱えられている。画面下部には一匹の蛇が≪真実≫の裸体の足元に絡み付いているが、これは時の寓意(分離派は時が経てばやがて認められる)と解釈するか、≪真実≫を貶める邪悪な敵意と解釈するか、意見が分かれている。とはいえ、この蛇が本作に官能性を付与しているのは明らかであり、その左右に配された、やや抽象的かつ精子を思わせるような2本の蒲公英と共に、本作の幻想性をより豊かなものとしている。また画面上部にはドイツ古典派を代表する詩人であり、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章に歌詞として用いられた詩『歓喜に寄す』の作者としても著名なフリードリヒ・クリストフ・フォン・シラーによる警句「汝の行いと芸術で多くの人の心に喜びを満たせないならば、少なき人の真の喜びのためにそれを成せ。多くの心にそれが叶うのは悪しきことだ。」が記されており、大勢に認められ、喜ばれるような大衆性を求めず、真に芸術を理解する少数の者へ向けて発信される、分離派の芸術的方向性を代弁しているとされている。なおウィーン市立歴史美術館に本作の最終的な習作(素描)『習作:ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』が所蔵されている。

関連:習作『ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』


【全体図】
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真実を映す水晶(又は鏡)を手にする裸体の女性。本作に描かれる裸体の女性の解釈については、一般的に画家が探求する芸術の真実の擬人化とする説が採用されているが、画面下部に蒲公英(タンポポ)が描かれていることから、新たに芽吹いた芸術である分離派の春を象徴する女神ヴィーナスとする説など諸説唱えられている。



【真実を映す水晶を手にする裸婦】
画面下部に配される一匹の蛇。この蛇に関しては、時の寓意(分離派は時が経てばやがて認められる)と解釈するか、≪真実≫を貶める邪悪な敵意と解釈するか、意見が分かれているが、その左右に配された、やや抽象的かつ精子を思わせるような2本の蒲公英と共に、本作の官能性や幻想性をより豊かなものとしている。



【画面下部に配される一匹の蛇】
画面上部に記される詩人シラーの警句。ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章用いられた『歓喜に寄す』の作者としても知られるシラーの本詩は、大勢に認められ、喜ばれるような大衆性を求めず、真に芸術を理解する少数の者へ向けて発信される、分離派の芸術的方向性を代弁しているとされている。



【画面上部に記される詩人シラーの警句】

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