Description of a work (作品の解説)
2008/05/09掲載
Work figure (作品図)
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水蛇 I

 (Wasserschlangen I)
1904-1907年 | ミクスト・メディア・羊皮紙 | 50×20cm
オーストリア美術館(ウィーン)

ウィーン分離派の最大の巨匠グスタフ・クリムト黄金様式の典型的な作品のひとつ『水蛇 I』。本作はクリムトがその画業の初期からしばしば取り組んできた≪水の中における官能的女性美≫を象徴的画題とした作品の中の1点であり、また同時に同系統の作品中、同性愛的傾向が顕著に示された最も優れた作品としても広く認められている。画面上部に配される美しい黄金の頭髪を水中でたゆたわせる裸体の女は恍惚の表情を浮かべながら、同じく金髪の女性を胸に抱き寄せている。抱き寄せられる金髪の女性は表情こそ見えないものの、明らかに薄くそして非常に細い(抱き寄せる)女性の胸を愛撫している様であり、観る者へ否が応にも官能的な印象を抱かせる。そして両者の背後にはまるで文様のような鱗が特徴的な水蛇が女性たちの官能的な愛の世界と絡み合うかのように配されており、ある種の象徴的雰囲気を感じさせることに成功している。さらに画面下部へは頭部が巨大化する古代的な魚と黄金色の水草、加えて様式化された蛸の足などが描き込まれており、水中の様子を強調させている。本作で最も注目すべき点は2人の女性らの同性愛的抱擁表現と、その退廃的でエロティクな雰囲気を絶妙に隠蔽する装飾性の高い模様的描写にある。特に女性2名の水中で揺らめく細い黄金の髪やそれと呼応するかのような水蛇の文様、そして同色の水草に示される単純化された形状による主題の象徴的表現は当時のクリムトの典型を明確に感じることができ、またその完成度も極めて高い。なお本作に描き込まれる水蛇には画家の第14回分離派展出品作として知られるベートーヴェン・フリーズからの引用が認められる。

関連:1898年 『流れる水』
関連:1899年頃 『水の精(銀の魚)』
関連:1901-1902年 『金魚』
関連:1904-1907年制作 『水蛇 II』


【全体図】
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恍惚の表情を浮かべる女性。本作はクリムトがその画業の初期からしばしば取り組んできた≪水の中における官能的女性美≫を象徴的画題とした作品の中の1点であり、また同時に同系統の作品中、同性愛的傾向が顕著に示された最も優れた作品としても広く認められている。



【恍惚の表情を浮かべる女性】
グロテスクな印象の魚。抱き合う女性らの背後にはまるで文様のような鱗が特徴的な水蛇が女性たちの官能的な愛の世界と絡み合うかのように配されており、ある種の象徴的雰囲気を感じさせることに成功している。



【グロテスクな印象の魚】
平面的に様式化された描写。女性2名の水中で揺らめく細い黄金の髪やそれと呼応するかのような水蛇の文様、そして同色の水草に示される単純化された形状による主題の象徴的表現は当時のクリムトの典型を明確に感じることができ、またその完成度も極めて高い。



【平面的に様式化された描写】

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