Description of a work (作品の解説)
2010/04/09掲載
Work figure (作品図)
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ケンタウロスに運ばれる死せる詩人


(Poète mort portee par un centaure) 1890年頃
33.5×24.5cm | 水彩・紙 | ギュスターヴ・モロー美術館

フランス象徴主義の巨匠ギュスターヴ・モロー晩年期の重要な指針的作品『ケンタウロスに運ばれる死せる詩人』。紆余曲折の画業を経て美術アカデミー会員へ選出された約2年後となる1890年頃に制作された本作は、モローの重要な着想(霊感)の源のひとつであったオルフェウスやサッフォー(サッポー)を始めとする、画家がその人生の中で数多く取り組んできた≪詩人≫そのものを主題とした作品で、本場面は死した詩人の亡骸を、上半身が人間で下半身が馬という姿が特徴的なギリシア神話の登場人物≪ケンタウロス≫が運ぶ場面が描かれている。画面中央やや上部へ配される死した詩人の身体は青白く変色し、まるでケンタウロスへ寄りかかるような脱力感からも生気を全く感じることはできない。画面の中央やや左側に描かれるケンタウロスは詩人の亡骸を右腕で抱きながら荒廃的かつ幻想的な地を闊歩しているが、うつむくその顔からは一見すると挫折や苦悩、無力感、失意、失望などの人間の物質的存在に対する精神性を感じることができる。さらに画面中央やや左下に配された死そのものを象徴する沈みゆく夕日がその精神性を強調している。しかし同時に本作に描かれるケンタウロスにはモローの死というものに対する精神的な共感や過去への憧憬も見出すことができる。さらに本作では晩年期特有の水彩を用いた大胆かつ繊細な筆触による色彩のより奔放的で、より強まった幻想性は観る者を強く惹きつける効果を生み出している。


【全体図】
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うつむきながら死した詩人の亡骸を運ぶケンタウロス。画面の中央やや左側に描かれるケンタウロスは詩人の亡骸を右腕で抱きながら荒廃的かつ幻想的な地を闊歩しているが、うつむくその顔からは一見すると挫折や苦悩、無力感、失意、失望などの人間の物質的存在に対する精神性を感じることができる。



【詩人の亡骸を運ぶケンタウロス】
全く生気を感じさせない死した詩人。本作はモローの重要な着想(霊感)の源のひとつであった≪詩人≫そのものを主題とした作品で、本場面は死した詩人の亡骸を、上半身が人間で下半身が馬という姿が特徴的なギリシア神話の登場人物≪ケンタウロス≫が運ぶ場面が描かれている。



【全く生気を感じさせない死した詩人】
死を象徴する沈みゆく夕日。本作では晩年期特有の水彩を用いた大胆かつ繊細な筆触による色彩のより奔放的で、より強まった幻想性は観る者を強く惹きつける効果を生み出している。



【死を象徴する沈みゆく夕日】

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