Description of a work (作品の解説)
2010/05/10掲載
Work figure (作品図)
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エウリュディケの墓の上のオルフェウス


(Orphée sur la tombe d'Enrydice) 1891年頃
173×128cm | 油彩・画布 | ギュスターヴ・モロー美術館

フランス象徴主義の偉大なる画家ギュスターヴ・モロー晩年の作品『エウリュディケの墓の上のオルフェウス』。画家と長年に亘って恋人関係にあり、本作制作の前年(1890年)に死去したアデライド=アレクサンドリーヌ・デュルーへの追悼的作品として制作されたと考えられる本作は、ギリシア神話に登場する吟遊詩人オルフェウスが、毒蛇に咬まれ死した妻エウリュディケを冥界から救い出すために冥府下りし、同地の王ハデスの前で竪琴を奏で、「冥界を抜けるまで後ろを振り返らぬこと」を条件にエウリュディケの返還願いを聞き入れられるものの、地上に辿り着く寸前にオルフェウスが振り返ってしまった為に、最愛の妻エウリュディケを永遠に失ってしまうという物語を主題に描かれている。本作について画家自身は次のような解説を残している。「枝は枯れ落ち、干乾びた樹の根で詩人は孤影悄然とし、竪琴は死に打ちのめされたかのような枝に掛けられ見捨てられる。この魂は孤独であり、光や喜び、生きる力は全て失われてしまった。あらゆるものから見捨てられ、慰めようもない孤独の中で詩人は自らを嘆き、悲しむ。そして魂は呻く。その嘆きこそ、孤独の中の唯一の音なき音なのだ。傍らで灯る憐憫(同情)の象徴たるランプの炎は墓標の奥で柔らかく思い出を照らし出している。詩人の周囲は静寂が支配し、そして壁に囲まれた小堂と聖池の上には月が昇っている。池には青藻から落ちる滴のみが規則的に、慎ましやかに音をたてる。それは憂鬱と慰めに満ちた音、死が支配する静寂の中における生命の音」。


【全体図】
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絶望と孤独の中のオルフェウス。本作は画家と長年に亘って恋人関係にあり、本作制作の前年(1890年)に死去したアデライド=アレクサンドリーヌ・デュルーへの追悼的作品として制作されたと考えられる。



【絶望と孤独の中のオルフェウス】
聖なる池の前の小神殿。本作はギリシア神話に登場する吟遊詩人オルフェウスの逸話≪冥府下り≫で、最愛の妻エウリュディケを永遠に失ってしまい、慰めようもない孤独の中で詩人は自らを嘆き、悲しむオルフェウスの姿を描いた作品である。



【聖なる池の前の小神殿】
静寂を支配する月光。モローは本作の情景について「詩人の周囲は静寂が支配し、そして壁に囲まれた小堂と聖池の上には月が昇っている。池には青藻から落ちる滴のみが規則的に、慎ましやかに音をたてる。それは憂鬱と慰めに満ちた音、死が支配する静寂の中における生命の音。」と述べている。



【静寂を支配する月光】

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