Description of a work (作品の解説)
2009/12/20掲載
Work figure (作品図)
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ガラテイア(ガラテア)

 (Galatée) 1880年
85.5×67cm | 油彩・板 | オルセー美術館(パリ)

フランス象徴主義の巨匠ギュスターヴ・モローの晩年期における代表的な神話画作品のひとつ『ガラテイア(ガラテア)』。モローが参加した最後の1880年のサロンへの出品作でもあり、画家が審査員を務めた1889年の万国博覧会へも出品された本作は、古代ローマの偉大なる詩人オウィディウスの最も有名な著書≪変身物語(転身物語)≫に典拠を得て制作された作品で、巨人族キュクロプスの中で特に粗暴で知られる一つ目の巨人≪ポリュペモス≫が、海神ネレウスの娘の中のひとりで、水晶より輝き白鳥の綿毛より柔らかと称された美しい海のニンフ≪ガラテイア(ガラテア)≫を見初める場面が選定されている。画面前景に描かれる海の精霊ガラテアは海中の岩場へ身体を預けるように浅く座り、左手は頭部付近へ、右手や下半身などは脱力的に描き込まれており真横から捉えられた頭部を含めると全身で緩やかなS字曲線を描いている。この艶かしくも女性的な美を強く感じさせる姿態は、『シュルレアリスム宣言』の著者としても20世紀前半期の詩人アンドレ・ブルトンを始めとするシュルレアリスト(超現実主義者)たちや19世紀末の象徴主義者らを強く魅了したことがよく知られている。そして画面奥へは岩場の隙間から美しきガラテアを目撃し、心を奪われる一つ目の巨人ポリュペモスが配されているが、その姿には巨人族特有の怪物的な印象を受けることはなく、むしろ叶わぬ恋に苦しむ男を連想することができる。本作で最も注目すべき点のひとつとして細密に描写された海中植物が挙げられる。波打った黄金の髪を掻き揚げる憂鬱的なガラテアへ絡みつくかのような海中植物は、パリの自然史博物館などでの綿密な研究・調査をおこなった上で丹念な筆触により極めて写実的に描写されており、モローの幻想的な象徴性の着想や表現には現実にあることが示されている。


【全体図】
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憂鬱そうな表情を浮かべる艶かしいガラテアの姿。本作は≪変身物語≫に記される、巨人族キュクロプスの中で特に粗暴で知られる一つ目の巨人≪ポリュペモス≫が、海神ネレウスの娘の中のひとりで、水晶より輝き白鳥の綿毛より柔らかと称された美しい海のニンフ≪ガラテイア(ガラテア)≫を見初める場面を主題とした作品である。



【艶かしいガラテアの姿】
ガラテアの身体に絡みつく海中植物。波打った黄金の髪を掻き揚げる憂鬱的なガラテアへ絡みつくかのような海中植物は、パリの自然史博物館などでの綿密な研究・調査をおこなった上で丹念な筆触により極めて写実的に描写されている。



【ガラテアの身体に絡みつく海中植物】
ガラテアへ絶望的な視線を向けるポリュペモス。画面奥へは岩場の隙間から美しきガラテアを目撃し、心を奪われる一つ目の巨人ポリュペモスが配されているが、その姿には巨人族特有の怪物的な印象を受けることはなく、むしろ叶わぬ恋に苦しむ男を連想することができる。



【絶望的な視線を向けるポリュペモス】

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