2009/04/19掲載
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ユピテルとセメレ(Jupiter et Sémélé) 1895年213×118cm | 油彩・画布 | ギュスターヴ・モロー美術館 関連:1875年頃制作 『レダ』 関連:1890-95年頃制作 『ユピテルとセメレ』
威厳に満ちた主神ユピテルの姿。モローが死の3年前となる1895年に、わずか4ヶ月で仕上げたとの逸話も残される本作は、神話≪ユピテルとセメレ≫を主題に独自的解釈に基づいて構成された大作中の大作である。
【威厳に満ちた主神ユピテルの姿】
神の威光に身体を反らせながらユピテルへと視線を向けるセメレ。本作の主題≪ユピテルとセメレ≫はセメレが、ユピテルに一度だけ本当の姿を見せて欲しいと懇願し、ユピテルが仕方なく神の姿に戻った途端、セメレの身体が神の威光(稲妻とされる)に焼き尽くされたとされる内容である。
【ユピテルへと視線を向けるセメレ】
ユピテルの発する威光で天使へと姿を変える精霊。本作には神話上の主題≪ユピテルとセメレ≫の他にも、側面的に神と人間との結婚≪聖婚≫の象徴化への取り組みとも解釈する研究者も多い(モローは1875年頃から聖婚の取り組みひとつとして『レダ』を画題とした作品を複数手がけていることも知られている)。
【天使へと姿を変える精霊】
画家の独自性が際立つ象徴的な表現。本作の非常に緻密で繊細な描写による複雑な構成や、無秩序的ながら華麗さと調和を感じさせる個性的な色彩表現、幻想性や神秘性を強調する流麗で儚げな線描などには、晩年期とは思えないほど画家の野心を見出すことができる。
【独自性が際立つ象徴的な表現】 |