Description of a work (作品の解説)
2009/12/28掲載
Work figure (作品図)
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百合の中の聖母

 (The Madonna in Lilies) 1905年
239.5×178.8cm | テンペラ・画布 | ジリ・ミュシャ・コレクション

19世紀フランスを中心に欧州へと広がったアール・ヌーヴォー様式の巨匠アルフォンス・ミュシャ、アメリカ時代の代表作『百合の中の聖母』。本作は画家が1904年から1910年にかけて度々訪れていたアメリカで制作された≪少女(乙女)と聖母≫を主題とした作品で、元々はエルサレムの教会のための大規模な装飾画のひとつとして構想されていたものである(※この装飾は実現しなかった)。画面左下には花冠を被った愛らしい赤毛の少女(乙女)が大きな草輪を手に持ちながら清楚な振る舞いで大地に腰を下ろしている姿が配されており、少女が身に着ける衣服はミュシャの故郷を容易に連想させるスラヴ風の民族衣装である。この少女を描く際、ミュシャはモデルの少女に姿態(ポーズ)は元より、ほぼ同様のデザインの衣服を始め、頭の花飾り草輪などを身に着けさせた後、写真に撮り、それを忠実に(画面上へ)再現していることが判明している。一方、この少女(乙女)の対角線上となる画面右上へは神々しく非常に清廉な聖母マリアがアトリビュートである百合に囲まれながら乙女の前に顕現している。本作の最も注目すべき点として挙げられるのは、無垢的な少女と彼女を慈しみ、そして同時に守護するかのような聖母マリアとの信仰心に富んだ関係性と、ミュシャ独自の世界観との見事な融合にある。登場する2名はいずれもミュシャらしい理想化された写実性を感じることができるが、少女の方は現実性を表すかのように明確な輪郭線によってはっきりと描写されているのに対して、聖母マリアの描写は背景の百合と溶け合うかのように薄く、そして幻想性に溢れている。この描写の差異によって両者の関係性を表す手法は、本作の清潔な聖性を見事に示すと同時に、画家の個性的な世界観をも表現することに成功している。


【全体図】
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スラヴ風の衣服を身に着けた無垢な乙女。本作は画家が1904年から1910年にかけて度々訪れていたアメリカで制作された≪少女(乙女)と聖母≫を主題とした作品で、元々はエルサレムの教会のための大規模な装飾画のひとつとして構想されていたものである。



【スラヴ風の衣服を身に着けた乙女】
神々しく非常に清廉な聖母マリア。本作の最も注目すべき点として挙げられるのは、無垢的な少女と彼女を慈しみ、そして同時に守護するかのような聖母マリアとの信仰心に富んだ関係性と、ミュシャ独自の世界観との見事な融合にある。



【神々しく非常に清廉な聖母マリア】
純潔の象徴である百合。登場する2名はいずれもミュシャらしい理想化された写実性を感じることができるが、少女の方は現実性を表すかのように明確な輪郭線によってはっきりと描写されているのに対して、聖母マリアの描写は背景の百合と溶け合うかのように薄く、そして幻想性に溢れている。



【純潔の象徴である百合】

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