2009/12/28掲載
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百合の中の聖母(The Madonna in Lilies) 1905年239.5×178.8cm | テンペラ・画布 | ジリ・ミュシャ・コレクション
スラヴ風の衣服を身に着けた無垢な乙女。本作は画家が1904年から1910年にかけて度々訪れていたアメリカで制作された≪少女(乙女)と聖母≫を主題とした作品で、元々はエルサレムの教会のための大規模な装飾画のひとつとして構想されていたものである。
【スラヴ風の衣服を身に着けた乙女】 神々しく非常に清廉な聖母マリア。本作の最も注目すべき点として挙げられるのは、無垢的な少女と彼女を慈しみ、そして同時に守護するかのような聖母マリアとの信仰心に富んだ関係性と、ミュシャ独自の世界観との見事な融合にある。
【神々しく非常に清廉な聖母マリア】 純潔の象徴である百合。登場する2名はいずれもミュシャらしい理想化された写実性を感じることができるが、少女の方は現実性を表すかのように明確な輪郭線によってはっきりと描写されているのに対して、聖母マリアの描写は背景の百合と溶け合うかのように薄く、そして幻想性に溢れている。
【純潔の象徴である百合】 |