Description of a work (作品の解説)
2010/03/24掲載
Work figure (作品図)
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スラヴ叙事詩−スラヴ式典礼の導入


(The Introduction of the Slavonic Liturgy)
1912年 | 610×810cm | 油彩・テンペラ・画布
モラフスキー・クロムロフ城

アール・ヌーヴォー様式の最も著名な画家アルフォンス・ミュシャ最後にして最高傑作群『スラヴ叙事詩』の中の1点『スラヴ式典礼の導入』。本作は9世紀から10世紀にかけて移住してきたスラヴ民族が王国を築きチェコの東部地域≪モラヴィア≫における、東ローマ帝国勅使(神学者)キュリロスによるスラヴ式典礼の導入場面を描いた作品である。中景として画面中央やや左側には宣教師によってスラヴ式の洗礼を受けるモラヴィア国王ロスティラフが描かれており、その周囲にはキリスト教(東方正教会)へと改宗した信者(国民)らが白衣を身に着けた姿で配されている。さらに画面上部ほぼ中央へは近景として≪スラヴの使徒≫とも呼ばれる、勅使キュリロスとその兄メトディオス(兄弟は聖書や典礼書のスラヴ語の翻訳や同地での布教、典礼の導入などをおこなった)が神々しい姿で配されており、その一段下には4人の聖人(画面右側)や抱擁し合う信者らの姿が超次元的で非現時的な空間にて丹念に描き込まれている。そして本作中、最も近景として画面下部左側には厳格性と正統性を感じさせる真正面を向いた青年が、あたかも勝利を宣言するかのように高らかと両腕を掲げており、その右手にはスラヴ民族の統一を象徴するひとつの輪が握られている。本作で最も注目すべき点は明暗差による現実と象徴の具現的対比にある。本作の主題となる≪スラヴ式典礼の導入≫場面は輝くような光を感じさせる白を基調とした明瞭な色彩で構成されているのに対して、場面の象徴性や思想性を表す構成要素は逆光の人物を思わせるような青々とした陰影の中で描写されている。このような明度の差による異なる対象の描き分けは全20点から構成される『スラヴ叙事詩』作品群の中でも特に秀逸の出来栄えを示している。


【全体図】
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スラヴ語による典礼の場面。本作は9世紀から10世紀にかけて移住してきたスラヴ民族が王国を築きチェコの東部地域≪モラヴィア≫における、東ローマ帝国勅使(神学者)キュリロスによるスラヴ式典礼の導入場面を描いた作品である。



【スラヴ語による典礼の場面】
≪スラヴの使徒≫とも呼ばれる勅使キュリロスとその兄メトディオス。画面上部ほぼ中央へは近景として≪スラヴの使徒≫とも呼ばれる、勅使キュリロスとその兄メトディオス(兄弟は聖書や典礼書のスラヴ語の翻訳や同地での布教、典礼の導入などをおこなった)が神々しい姿で配されている。



【勅使キュリロスとその兄メトディオス】
抱擁し合う信者たち。本作の主題となる≪スラヴ式典礼の導入≫場面は輝くような光を感じさせる白を基調とした明瞭な色彩で構成されているのに対して、場面の象徴性や思想性を表す構成要素は逆光の人物を思わせるような青々とした陰影の中で描写されている。



【抱擁し合う信者たち】
スラヴ民族の統一を象徴する輪を掲げる青年。本作中、最も近景として画面下部左側には厳格性と正統性を感じさせる真正面を向いた青年が、あたかも勝利を宣言するかのように高らかと両腕を掲げており、その右手にはスラヴ民族の統一を象徴するひとつの輪が握られている。



【民族の統一を象徴する輪を掲げる青年】

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