Description of a work (作品の解説)
2010/04/14掲載
Work figure (作品図)
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スラヴ叙事詩−ロシアの農奴解放の日


(The Abolition of Serfdom in Russia)
1914年 | 810×610cm | 油彩・テンペラ・画布
モラフスキー・クロムロフ城

アール・ヌーヴォー様式の最も著名な画家アルフォンス・ミュシャ最後にして最高傑作群『スラヴ叙事詩−ロシアの農奴解放の日』。本作はミュシャが1910年に故郷チェコへと帰郷した翌年から制作が開始された、(画家も血を引き自身のアイデンティティにもなっていた)スラヴ民族の歴史を主題とする全20枚から構成される連作群≪スラヴ叙事詩≫において19番目に位置する≪ロシアの農奴解放の日≫を描いた作品である。本作≪ロシアの農奴解放の日≫は19世紀ロマノフ朝帝政ロシア時代、早急な近代化を目指す同国が労働力確保のため、当時のロシア皇帝アレクサンドル2世が1861年2月に発布した大改革政策のひとつ≪農奴解放令(農奴制解体の勅令)≫を、モスクワの赤の広場で告げるロシアの役人とその周囲に集まる(農奴であった)スラヴ民族の場面が描かれているものの、その光景からは解放の歓喜や安堵は伝わってこない。むしろ画面中央に描かれた発令を告げるロシア役人から(身分的対比を連想させるように)やや離れた位置で囲むように集う解放されたスラヴ民族らの当惑的な表情や異様な静けさすら漂う雰囲気からは、漠然とした将来への不安や一抹の緊張を感じることができる。ここにその後のスラヴ民族に対するミュシャの歴史的悲観を見出すことができるが、同時に、本作の背景として描かれる薄日に包まれるおぼろげな聖ワリシー寺院にはスラヴ民族の未来に対する勝利の象徴も示されている点は特筆に値するものである。


【全体図】
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農奴解放令を告げるロシアの役人。本作は早急な近代化を目指す帝政ロシア皇帝アレクサンドル2世が労働力確保のため、1861年2月に発布した大改革政策のひとつ≪農奴解放令≫を、モスクワの赤の広場で告げるロシアの役人とその周囲に集まる(農奴であった)スラヴ民族の場面が描かれている。



【農奴解放令を告げるロシアの役人】
不安げな表情を浮かべるスラヴ民族。ロシア役人から(身分的対比を連想させるように)やや離れた位置で囲むように集う解放されたスラヴ民族らの当惑的な表情や異様な静けさすら漂う雰囲気からは、漠然とした将来への不安や一抹の緊張を感じることができる。



【不安げな表情を浮かべる人々】
幻想的な聖ワリシー寺院の象徴性。本作には解放後のスラヴ民族に対するミュシャの歴史的悲観を見出すことができるが、同時に、本作の背景として描かれる薄日に包まれるおぼろげな聖ワリシー寺院にはスラヴ民族の未来に対する勝利の象徴も示されている点は特筆に値するものである。



【幻想的な聖ワリシー寺院の象徴性】

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