Description of a work (作品の解説)
2009/09/27掲載
Work figure (作品図)
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眼=気球

 (Eye-Balloon) 1878年
42.2×33.3cm | 木炭・紙 | ニューヨーク近代美術館

フランス象徴主義の偉大なる画家オディロン・ルドン黒の時代の代表作『眼=気球』。本作はルドンが画業の初期から取り組んでいた、≪モノクローム・パステル≫と呼称される木炭画作品の中の1点で、1878年に制作された本作の画題は名称にて示されるよう≪眼≫と≪気球≫である。本作では画面左下に僅かに生える草以外何も描かれない空虚な荒野の中で、ぽっかりと浮かぶように気球が画面中央に描かれているが、その気球は遥か上空へと視線を向ける巨大な眼球として表現されている。さらに気球に乗せられるのは皿を彷彿とさせる円盤の上に生物(又は人間)の頭部らしい物体の両目から上半分のみが象徴的に描かれている。画家は幼少期に自然の中で孤独に遊ぶ中、己の≪眼≫で見るという力を培い、見る・見抜くという能力がその人物の知性は基より生きる上のあらゆる面で非常に重要であると認識していた。そのようなルドンの≪見る≫行為、そして≪眼≫というものに対する意識が本作には明確に示されている。また本作から感じられる自然の中に潜む混沌とした不気味な恐怖感や幻想性はルドンの頭の中にある(少年期などの)記憶や想像によって創造される心象的世界の象徴化であり、当時、最先端の芸術として花開いていた印象派の色彩豊かな作風と一線を画すかのように、色彩を排した闇を思わせる自然界の陰影と画家の精神性を融合させた黒色によって、夢想性と内面的傾向を明確に示しているのである。なお1882年に制作されたリトグラフ集≪エドガー・ポーに≫の中で本作をほぼ忠実に再現した作品『眼は奇妙な気球のように無限へ向かう』が掲載されている。


【全体図】
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遥か上空へと視線を向ける気球の眼。本作では画面左下に僅かに生える草以外何も描かれない空虚な荒野の中で、ぽっかりと浮かぶように気球が画面中央に描かれているが、その気球は遥か上空へと視線を向ける巨大な眼球として表現されている。



【上空へと視線を向ける気球の眼】
不可思議で不気味な物体。画家は幼少期に自然の中で孤独に遊ぶ中、己の≪眼≫で見るという力を培い、見る・見抜くという能力がその人物の知性は基より生きる上のあらゆる面で非常に重要であると認識していた。



【不可思議で不気味な物体】
荒野に僅かに生える草。本作から感じられる自然の中に潜む混沌とした不気味な恐怖感や幻想性はルドンの頭の中にある(少年期などの)記憶や想像によって創造される心象的世界の象徴化である。



【荒野に僅かに生える草】

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