Description of a work (作品の解説)
2010/05/13掲載
Work figure (作品図)
■ 

エジプトへの逃避


(Fuite en Egypte) 1890年代以降
45×38cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

フランス象徴主義における稀有な存在オディロン・ルドンの代表作『エジプトへの逃避』。詳しい制作年代については画家が色彩表現を開眼させた1890年代以降、付け加えればルドンが自身の芸術的展開において≪宗教的主題≫≪神話的主題≫≪英雄的主題≫の3主題に注力し始めた1900年以降に制作されたと推測するのみである本作は、新約聖書に記される有名な逸話≪エジプトへの逃避≫を主題に制作された作品である。本主題≪エジプトへの逃避≫はユダヤの王ヘロデが、やがて己の地位を脅かす存在になる神の子イエスの存在を恐れ、ベツレヘムに生まれる2歳以下の新生児の全てを殺害するために兵士を放ったものの、聖母マリアの夫である聖ヨセフが天使から「幼エジプトへ逃げよ」と託宣を受け、聖母マリアと幼子イエスを連れエジプトへと逃避する場面を指し、ルドン自身は主題に対して「希望もなく、また終わりもない亡命の苦悩の中、祖国から遠く離れた空の下を必死に逃避する姿」と捉えていたことが知られており、本作には画家の幼少期から抱き続けた心象的世界観を見出すことができる。画面左下に配される聖母マリアに抱かれる幼子イエスとロバをひく義父ヨセフは真紅の外套を身に着け神々しい光に包まれている。背景は(本主題としてはやや珍しく)神秘的で不安定な闇に包まれており聖母子らの放つ光によって一本の大樹が照らし出されている。この大樹は画家の故郷ボルドー近郊ペイルルバードの森林の樹木を彷彿とさせ、唯一本のみ配される大樹にはルドンの幼少期の孤独的な心象風景を感じることができる。また色彩表現においても幻想性が漂う暗中における光彩と色彩描写には当時の画家の芸術的典型を見出すことができる。


【全体図】
拡大表示
神々しい光に包まれる聖母子。ルドンが自身の芸術的展開において≪宗教的主題≫≪神話的主題≫≪英雄的主題≫の3主題に注力し始めた1900年以降に制作されたと推測される本作は、新約聖書に記される有名な逸話≪エジプトへの逃避≫を主題に制作された作品である。



【神々しい光に包まれる聖母子】
聖母子らの放つ光に照らされ、闇に浮かび上がる大樹。ルドン自身は主題に対して「希望もなく、また終わりもない亡命の苦悩の中、祖国から遠く離れた空の下を必死に逃避する姿」と捉えていたことが知られており、本作には画家の幼少期から抱き続けた心象的世界観を見出すことができる。



【闇に浮かび上がる大樹】
神秘的で不安的な闇の表現。背景は神秘的で不安定な闇に包まれており聖母子らの放つ光によって一本の大樹が照らし出されている。この大樹は画家の故郷ボルドー近郊ペイルルバードの森林の樹木を彷彿とさせ、唯一本のみ配される大樹にはルドンの幼少期の孤独的な心象風景を感じることができる。



【神秘的で不安的な闇の表現】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ