Description of a work (作品の解説)
2010/04/11掲載
Work figure (作品図)
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ルッジェーロとアンジェリカ


(Roger et Angélique) 1910年頃
91.5×71cm | パステル・紙・画布 | ニューヨーク近代美術館

フランス象徴主義の大画家オディロン・ルドンの代表的作例のひとつ『ルッジェーロとアンジェリカ(ロジェとアンジェリカ)』。1913年にアメリカで開催された国際現代美術展への出品作としても知られる本作は、16世紀イタリアを代表する詩人ルドヴィーコ・アリオストの傑作叙事詩≪怒れるオルランド(狂えるオルランド)≫中に記される、美しく又恋多きキタイ(※インド)の姫君アンジェリカが魔術師に騙され海賊に捕らわれた後、海の怪物の生贄として鎖で岸壁に繋がれるものの、彼女に激しい恋心を抱いていた主人公のひとり遊歴騎士ルッジェーロが上半身が鷲、下半身が馬という誇り高き伝説の生物ヒッポグリフに跨りながら怪物を退治し、アンジェリカを救い出す場面を主題とした作品で、フランス新古典主義最後の巨匠ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルも同主題の作品『アンジェリカを救うルッジェーロ』を手がけている。近景として画面左側へ描かれる遊歴の騎士ルッジェーロは右手に長槍を持ちながらヒッポグリフの巨躯に跨り岩に繋がれたアンジェリカを目指している。画面右側へはルッジェーロの参上に気づいたのであろう怪物に怯えながら必死に脱出を試み身悶えする鎖で岸壁へ繋がれた裸体のアンジェリカが描き込まれている。青色を基調とした幻想的な岸壁風景の中へ最も明瞭に描かれるのはおどろおどろしく光に包まれた怪物の姿であり、ルッジェーロもアンジェリカも画面中ではその光によって浮かび上がるのである。また青色の闇と画面下部の荒れ狂うような高波の海は、まるで世界を混沌で包み込むような印象を観る者に与えるが、そこには絶望的な恐怖感はなく、むしろ(ある種の幻覚的な)夢想的雰囲気を感じることができる。本作の独特な主題の表現については画家はもちろん、その時代的背景の影響も考察されており、そのような点からも本作は画家晩年期の代表的作例として特に注目されている。


【全体図】
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ヒッポグリフに跨る遊歴の騎士ルッジェーロ。本作は16世紀イタリアを代表する詩人ルドヴィーコ・アリオストの傑作叙事詩≪怒れるオルランド(狂えるオルランド)≫の一場面を主題とした作品である。



【遊歴の騎士ルッジェーロの姿】
岩に繋がれるアンジェリカ。1913年にアメリカで開催された国際現代美術展への出品作としても知られる本作の画面右側へはルッジェーロの参上に気づいたのであろう怪物に怯えながら必死に脱出を試み身悶えする鎖で岸壁へ繋がれた裸体のアンジェリカが描き込まれている。



【岩に繋がれるアンジェリカ】
幻想性を感じさせる青色の岸壁。本作の独特な主題の表現については画家はもちろん、その時代的背景の影響も考察されており、そのような点からも本作は画家晩年期の代表的作例として特に注目されている。



【幻想性を感じさせる青色の岸壁】

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