Description of a work (作品の解説)
2009/10/15掲載
Work figure (作品図)
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笑う蜘蛛

 (L'araignee souriante) 1881年
49.5×39cm | 木炭・紙 | オルセー美術館(パリ)

フランス象徴主義の画家オディロン・ルドン1880年代の代表作『アリ・ルドンの肖像』。妻カミーユ・ファルトと結婚した1880年の翌年(1881年)に木炭によって制作された本作は、画家が繰り返し描いてきた≪蜘蛛≫を画題とした作品である。同時代のフランスを代表する小説家ジョリス=カルル・ユイスマンスの傑作≪さかしま≫内に「身体の中心に人間の顔を宿す驚くべき蜘蛛」と表現されたこともあり、人々の注目を集めることになった本作には薄暗い空間の中へ顔と胴体が一体となった非常に足の長い黒蜘蛛が配されるのみであり、わずかに背景として描き込まれているのはタイル的な床だけである。そして画面中央に描かれる黒蜘蛛は、あたかも悪知恵を働かせているかのように、にたりと気味の悪い笑みを浮かべており、観る者にある種の不快で邪悪的な印象を与える。この黒蜘蛛とその笑みは、ルドン、そして人間誰しもの心(精神)の奥底(又は心の闇)に潜む欲望や嫉妬など、知性や理性と対極にある存在の象徴として具象化された生物であり、そのような側面から考察すると黒蜘蛛の浮かべる薄笑みは本作と理性を以って対峙する観る者をあざ笑っているかのようでもある。さらに本作に用いられる≪黒色≫という色彩にも注目すべきである。ルドンは≪黒≫という色を、生命や肉体、精神などあらゆる面における正負的な力の本質的な色彩と捉えており、心の内面に棲む存在(本作では蜘蛛という生物)を黒色で表現しているは、すなわち心の原動であるということに他ならない。なお本作が手がけられた数年後、リトグラフによる作品も制作されている。


【全体図】
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眼を見開き観る者と対峙する黒蜘蛛。同時代の小説家ユイスマンスの傑作≪さかしま≫内に「身体の中心に人間の顔を宿す驚くべき蜘蛛」と表現されたこともあり、人々の注目を集めることになった本作には薄暗い空間の中へ顔と胴体が一体となった非常に足の長い黒蜘蛛が配されるのみであり、わずかに背景として描き込まれているのはタイル的な床だけである。



【眼を見開き観る者と対峙する黒蜘蛛】
薄気味の悪い笑みを浮かべる口元。この黒蜘蛛とその笑みは、ルドン、そして人間誰しもの心(精神)の奥底(又は心の闇)に潜む欲望や嫉妬など、知性や理性と対極にある存在の象徴として具象化された生物であり、そのような側面から考察すると黒蜘蛛の浮かべる薄笑みは本作と理性を以って対峙する観る者をあざ笑っているかのようでもある。



【薄気味の悪い笑みを浮かべる口元】
画面の端へと伸びる細く長い足。ルドンは≪黒≫という色を、生命や肉体、精神などあらゆる面における正負的な力の本質的な色彩と捉えており、心の内面に棲む存在(本作では蜘蛛という生物)を黒色で表現しているは、すなわち心の原動であるということに他ならない。



【画面の端へと伸びる細く長い足】

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