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馬上のチャールズ1世とサン・アントワープの領主の肖像
(Charles I on Horseback with M de St.Antoine) 1633年
368×269cm | 油彩・画布 | バッキンガム宮王室コレクション |
ヴァン・ダイク肖像画作品の代表作『馬上のチャールズ1世とサン・アントワープの領主の肖像』。本作は1632年からヴァン・ダイクが宮廷画家となり仕えていた当時の英国王チャールズ1世の馬上の姿と、傍らに馬丁長ピエール・アントワーヌ・ブールダンを配した肖像画作品で、王の権威は神から与えられたものとする王権神授説を信奉したチャールズ1世の高潔で王としての絶対的な正当性と優位性を保ちながら、堅苦しい形式を重んじた公式的な表現からの逸脱を示し、非常に柔和で自然な表現が用いられている。諸外国同様、当時の欧州で最も主流であった絶対王政による専制政治を強いたチャールズ1世は、1642年に議会派との対立から勃発した内戦をきっかけに、1649年には斬首刑に処されるものの、巨匠ラファエロやヴェネツィア派の大画家ティツィアーノ、当時最も名を馳せていた画家ルーベンスなどを始めとした芸術作品の熱心な収集家でもあった。このような芸術に関し造詣深かった王チャールズ1世の期待に答えるべく、本作では公式的な肖像画でありながら、ルネサンス期の古典芸術を思わせる詩情に溢れた理想主義的な描写手法が示されていることも大きな特徴のひとつである。
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