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慈愛 (La carità)
1611年 | 油彩・画布 | カポディモンテ美術館(ナポリ) |
17世紀エミリア派の巨匠バルトロメオ・スケドーニの現存する作品の中で最も知られる傑作『慈愛』。ナポリ地方の名家ファルネーゼ家のコレクションからカポディモンテ美術館へ収蔵されることになった本作は、画家がパルマに定住した後、最も精力的に作品制作をおこなっていた1610年以降(1611年頃)に描かれたと推測されている。本作が伝統的に『慈愛』と呼称されるのは画面中で孤児らへ施しを与える女性の慈愛性に由来するためであるが、むしろそれを受ける孤児の、特に画面左の杖をついた盲児の虚ろな表情の描写は、観る者に強烈な印象を与えるだけでなく、厳しい現実を突き付ける。このような自然主義的な写実性は同時代を代表する画家カラヴァッジョに強く示される表現であり、史実的根拠は極めて乏しいものの、一部の研究者からは関連性を指摘されている。また画面右下の幼児に示される豊かな色彩と叙情的な表現は、スケドーニが最も影響を受けた画家コレッジョが得意とした感傷性豊かな表現手法である。人物の配置においても中央より左右により頭身の高い人物を配することによって画面内に絶妙なバランスを構築しているほか、中央でパンを与える女性とそれを受け取る孤児との間に空虚な空間を置くことや使用する色彩の違いによって、本作の富裕者(聖者)と貧者とをより強調しているのである。
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