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叙事詩人の霊感 (Inspiration du poète) 1630年前後
184×214cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
フランス古典主義の画家ニコラ・プッサン初期の代表作『叙事詩人の霊感』。本作に描かれるのは月桂樹の冠を被るアポロンが叙事詩人に霊感を与え、それを詩句として書き記す(記させる)姿で、その画題に画家がローマで強く影響を受けたラファエロの作品などルネサンスの巨人らに倣う人文主義的な古典様式の特徴が顕著に示されているのが大きな特徴である。本場面では、アポロンが叙事詩人に霊感を与える姿に加え、太陽神アポロンに付き従う諸芸術を司る九人の女神ミューズ(ムーサ)の中から最も賢明とされた叙事詩を司るカリオペと、月桂樹の冠を手にするプットーを二体配している。特にプットーの内の一体は栄光の証として月桂樹の冠を叙事詩人に被せようとしており、もう一体はアポロンとカリオペの間で冠と、詩人ホメロスの作とされる古代ギリシアの最も著名な叙事詩のひとつ≪オデュッセイア≫を手にしている。さらにその足元にはオデュッセイア同様、古代ギリシアの最も著名な叙事詩のひとつ≪イリアス≫と≪アエネイス≫が置かれている。堂々たるアポロンを中心に、右側にはアポロンから霊感を授かるという栄誉を与えられた叙事詩人を、左側には叙事詩を司るカリオペを並行的に配することで画面内に安定感と心地よいリズムを生み出している。
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