Description of a work (作品の解説)
2007/10/25掲載
Work figure (作品図)
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家族

(Familly)1891-1892年頃
81.3×66cm | 油彩・画布 | クライスラー美術館(ノーフォーク)

印象主義時代に活躍したアメリカ出身の女流画家メアリー・カサットの代表作『家族』。本作は1880年代末から顕著に関心を示すようになった≪母と子≫を画題とした作品で、屋外で母親が裸体の幼子を抱き、幼子は(おそらく姉であろう)少女と視線を交わすという母子らの姿は、ルネサンス三大巨匠のひとりラファエロ・サンツィオの聖母子像(例:美しき女庭師(聖母子と幼児聖ヨハネ))などを彷彿とさせる。この古典的な三角形(ピラミッド形)の人物配置による家族像の構図展開が本作の最も大きな特徴であるが、本作には(画家が「人格的な神を信じることはできない」と明言していたよう)宗教的な意図や感情とは決定的に異なった、現代性やそこに流れる現代的精神がはっきりと感じられる。さらに本作には少女が手にする一輪のカーネーション(赤色のカーネーションの花言葉は『母の愛情』であるが、図像学的にはキリストの受難を表すとされている。)や母の慈愛に満ちた表情など画家の作品としては珍しい(世紀末に流行した)象徴主義的な要素が示されている。表現手法としても本作の明瞭な色彩、特に戸外の緑色と母親が身につける紫色の衣服の色彩的対比は秀逸な出来栄えをみせているほか、明確な輪郭線や平面的な構成要素の描写に日本の浮世絵からの影響が感じられる。このように本作は画家の個性が良く示された良作であると共に、象徴主義的な表現など特別な要素も含んでいる作品として非常に重要視されている作品のひとつでもある。


【全体図】
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屋外で椅子に座り我が子を抱く母親。本作の屋外で母親が裸体の幼子を抱き、幼子は(おそらく姉であろう)少女と視線を交わすという母子らの姿は、ルネサンス三大巨匠のひとりラファエロ・サンツィオの聖母子像(例:美しき女庭師(聖母子と幼児聖ヨハネ))などを彷彿とさせる。



【屋外で椅子に座り我が子を抱く母親】
母親の腕に抱かれる裸体の幼子。本作の明瞭な色彩、特に戸外の緑色と母親が身につける紫色の衣服の色彩的対比は秀逸な出来栄えをみせているほか、明確な輪郭線や平面的な構成要素の描写に日本の浮世絵からの影響が感じられる。



【母親の腕に抱かれる裸体の幼子】
慈しむように幼子と視線を交わす少女。本作には少女が手にする一輪のカーネーションや母の慈愛に満ちた表情などメアリー・カサットの作品としては珍しい(世紀末に流行した)象徴主義的な要素が示されている。



【慈しむように幼子と視線を交わす少女】

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