2008/08/26掲載
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ネヴァモア(横たわるタヒチの女)(Nevermore. O Tahiti) 1897年 60×116cm | 油彩・画布 | コートールド美術研究所 恐々とした表情を浮かべる裸婦。本作は1895年7月から没するまで滞在した、所謂≪第2次タヒチ滞在期≫に制作された作品で、扱われる画題や画面展開から5年程前に手がけられた第1次タヒチ滞在期の代表作『マナオ・トゥパパウ(死霊は見守る、死霊が見ている)』のヴァリアントとも推測されている。
【恐々とした表情を浮かべる裸婦】
装飾性を排した豊かな裸婦の姿態。画家自身の言葉「単純な裸体によって、ある種の野蛮な豪華さを暗示したかった。…純粋に画家の手で紡ぎだされた豊かな質感(マティエール)である。人の創造力のみがこの空想上の住居を飾ることができるのだ」に従えば本作は裸婦の純粋な描写の昇華と解釈される。
【装飾性を排した豊かな裸婦の姿態】 暗喩的(象徴的)で意味深げに排される悪魔の鳥。画家自身は「(ポーの大鴉ではなく)見張りをする悪魔の鳥」と否定しているものの、エドガー・アラン・ポーによる詩≪大鴉≫に記された「二度と無い(ネヴァーモア)」と鳴く神秘の鴉との明らかな関連性が指摘されている本作では、画面上部やや左側の窓に≪悪魔の鳥≫として象徴的で平面装飾的な青い鳥が描かれており、横たわる裸婦を見張っている。
【暗喩的で意味深げに排される悪魔の鳥】 |